脱原発・東電株主運動
NUCLEAR PHASE-OUT TEPCO SHAREHOLDER'S MOVEMENT
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2017東電株主総会の記
 1206名(出席株主数)、3時間4分。2011年は9282名、6時間。たった6年しか経っていないのに、福島の苦しみは幾重にも重なったまま、むしろ重篤になった部分さえあるのに……。株主の関心は薄れた? あきらめた? 株を売却してしまった? 広い代々木第一体育館に寂しい空席が広がりました。

 昨年は、会場前に「日本の原発は安全」「原発を再稼働して料金値下げ」のプラカードを手に、大挙して現れた団体“しきしま会”は現れず、代わりに“二の橋倶楽部”なる幟の面々。「原発再稼働」のプラカードを手にし、配布する豪華パンフレットの内容(放射能の正しい知識を持とう)も同じなので、結局お仲間なのでしょう。人数は半減の約20名。

 当方は、たんぽぽ舎の皆様の多数の応援を頂いたり、駆けつけて下さる方もいたり、グリーンピースの独自パフォーマンスもあり、心強いチラシ配りができました。数は力を実感!!

 10:00開会。30分間の事業報告後、議案審議。議長は、「提案株主は補足説明がある場合は3分以内で」と促しますが、私たちは「趣旨説明」と明言し対抗。まずは、原発再稼働株主の提案から開始です。不愉快なことに、「脱原発を主張する中には公安警察の調べでは過激派中核派等のメンバーがいる」との発言がありました。まさに、イメージ操作そのもの! 私たちも、各趣旨説明の頭に「共謀罪の対象にならない一般人です」と強調しました。

 4号議案から12号議案まで、提案の概略と賛成割合は以下の通りです。
▼4号議案:東京電力パワーグリットの売却(賛成2.17%)
▼5号議案:柏崎刈羽原子力発電所の減損会計適用(2.26%)
▼6号議案:福島第二原発と柏崎刈羽原発を廃炉と廃棄物管理のための研究施設とする(2.26%)
▼7号議案:監査委員会の健全化(7.81%)
▼8号議案:原子力事故時の避難者受け入れ周辺自治体との安全協定(2.27%)
▼9号議案:原子力事故を想定した避難訓練の実施(2.26%)
▼10号議案:原発災害保養基金の創設(2.26%)
▼11号議案:福島原子力発電所勤務者に対する保養の提供(2.21%)
▼12号議案:柏崎刈羽原子力発電所の原子炉圧力容器の健全性の検証(2.26%)

 今年の特長は、ほとんどヤジがなかったことです。例年の発言妨害とも言えるヤジがないのは静粛でよいと言えばよいのですが、何か気味が悪いような……。およそ40分間、お陰で粛々と進行しました。

 次は、事前質問109問に対する山口副社長からの回答。20分の見込みと言い、実際は23分間だったので、事前に随分練習したようです。長時間に及び、ここで途中退場者が多いと担当者が愚痴を言っているところです。私たちは、質問項目だけでもいいから、スクリーンに投影等工夫して欲しいと例年申し入れしています。残念ですが、改善はなされませんでした。

 いよいよ質疑応答。原発再稼働株主の修正動議を含めて、12名が発言しました。なんと! そのうち12分の10が脱原発関連発言だったのです。おまけに、今までほとんど指名されなかった提案株主席からも指名され、數土会長(議長)から最後のプレゼント?と思うような指名率でした。

 更に數土会長からビックリ発言「福島事故処理関連に総額およそ22兆円は驚天動地、未曾有宇の数字。だが、責任を貫徹するため自分を捨てても挑戦するしかない。無理を承知でやるしかない」と。最後だから正直に発言したのでしょうか、ここでも変化を実感しました。

 他にも印象的な発言がありました。「放射線は怖くない、人体実験に応ずるボランティア募集を!」というとんでも株主に増田常務「放射線は正しく怖がることが大切」。「他国からの飛翔体への対策は?」に対し、姉川常務「国と国が争わないことが大切。貧困がないようにすることも」。

 全ての株主提案は否決され、新取締役13名が登壇し1:05終了。その後、27日に福島に挨拶に行った小早川新社長「双葉町民も早く帰還をしていただきたい」、記者「双葉町は避難解除されていません」、新社長「北部に……」記者「北部は時間制限付き立ち入り許可地域です」このやりとりが、新執行部の全てを象徴しているような?

 株主の皆様、沢山出席しましょう! そして沢山発言しましょう! 少しでもこんな執行部に緊張感を持ってもらいましょう!!(K)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.267(2017年7月9日発行)より。


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福島第二原発のゆくえ――福島への負担を強いる原発
  2017年3月8日、民進党は福島第二原発を廃炉にする法案を提出した。
 いつまでも宙ぶらりんのまま放置されていても、法的には東電が何も決めなければ先に進まないとして、原子炉等規制法に廃炉を規定する改正案という形式を取っている。
 具体的には、福島第二原発を特定原子力発電所と指定できるよう改正した上で「法施行後2年以内に適合性審査の申請がなされなかったときは、設置許可が取り消され、廃炉が確定する」との主旨の条文を追加する。
 確かに法で縛れば廃炉にすることは可能だ。しかし、国にその気があれば、廃炉は実現していた。
 東電は実質国営企業である。株式の過半数を有するのは原子力損害賠償・廃炉等支援機構だから、国の方針により廃炉を決めるのは容易い。つまり福島県や県内自治体の廃炉決議を無視し、現在に至るも福島第二原発を廃炉にしていないのは国の意志でもある。
 東電は繰り返し、福島第二のあり方について次のように説明している。
 「今後の扱いについては広く社会の皆さまのご意見や国のエネルギー政策の動向、廃炉作業のバックアップとしての役割として機能していることを含め、置かれている様々な状況を踏まえてしっかりと検討していかなければならないと考えています。」
 廃炉のバックアップ機能を果たすことと、実用発電用原発として存在することは、実は両立しない。バックアップ機能は発電所として稼働したら出来なくなる。資機材や人員を発電所にとって不必要に持つことになり、安全性を大きく損なう。発電所の片手間に廃炉作業が出来るはずもない。また、バックアップ機能の中には実規模試験などを含むだろうから、ますます不可能だ。
 国のエネルギー政策の動向を見るとは、東電によると「国が案を示したエネルギー需給の姿を実現する施策や原子力事業環境に関する政策などのことについて指しており、当社としては、こうした国が示すエネルギー需給の姿も含めて、総合的に勘案していく必要がある」という。これは再稼動を想定しているように思われる。
 福島県も県内市町村も第二原発の再稼動を認めるなどということは想定不可能だから、誰が見ても東電の福島第二については、どうにでも取れる表現で時間を稼いでいると思われる。
 その背景には、廃炉にかかる費用がある。第二原発の総見積額の概算2801億円に対し、引当金として積み立てた額は1913億円で、まだ888億円不足している。最も少ない1号機で160億円が未引当額だというから、年間計上額8億円に対して、20年かかることになる。
 原発の廃炉引当金は当初50年間で引き当てる計画だったから、2016年現在で運転開始34年(1982年運転開始)では不足することになる。
 ただし、福島第二を廃炉にしただけで、ただちに債務超過になることはない。
損得勘定
 福島第二原発は動かすあてもないが、福島第一原発のように「特定原子力発電所」として指定されているわけでもない。「特定原子力発電所」とは、原子炉等規制法第64条の2に規定される原発。重大事故を起こした後に「保安又は特定核燃料物質の防護につき特別の措置を要する施設」として、指定下原子力施設を言う。
 第二原発も過酷事故一歩手前まで行ったが、炉心溶融などは免れたため、特定原子力発電所に指定されていない。
 その福島第二原発を現状のままで維持するには莫大な費用がかかる。
 使用済燃料プールに入っている燃料を冷却する費用、原子炉等規制法に規定される原発である限り求められる、安全保護設備を維持管理するための費用、維持管理に当たる人件費などで年間1600億円以上もかかっている。一方で生み出す利益はゼロである。
 廃炉にしても、これらの費用がゼロになるわけではない。当面は同程度の費用はかかり続けるだろう。しかし費用を減らす対策は、運転を前提としている原発と同様の安全性を要求される現状よりは実施しやすい。例えば、燃料プールから使用済燃料を全部乾式貯蔵に移せば、原子炉とプールを冷却するシステムの全てがメンテナンス不要になるし、監視も必要なくなる。
 一方、「廃炉引当金が足りない」などの経済的理由が廃炉決定を遅らせているのではなさそうである。金額としては大きいが、全部を廃炉にしても単年度の利益を超えるほどではない。
 この背景には国の意向が強く働いていることは確かだ。
柏崎刈羽原発の損得勘定
 原発の費用は2014年度5486億円、2015年度6063億円と、有価証券報告書に記載されている。この巨額の費用が東電の経営を圧迫しているのは間違いない。柏崎刈羽原発だけで、この5年間で6800億円に達する。

 1~4号機のある「荒浜側」は、地盤が特に悪く、地震により深い場所まで液状化する可能性が否定できない。そのため巨額の費用を投じて作った防潮堤の基礎杭が液状化に伴う「側方流動」(液化した地盤が流れる現象)で折れてしまう可能性がある。
 これでは防潮堤が津波により倒壊してしまう。
 日本で初めて造った免震重要棟は、地震想定の誤りから新規制基準には適合しないことが2014年からわかっていたのに、東電は規制委にも県にも明確にしてこなかったため、田中委員長や米山知事から厳しく批判された。
 費用をかけてもかけても、再稼動どころか、動かせる可能性が消滅していく原発が、柏崎刈羽原発である。
 原発を全部廃炉にしたとしても、すぐにゼロになるわけではないが、なるべく費用をかけずに安全に保つ方法はある。
 停止している原発で最も危険なものは使用済燃料であり、それを冷却するプールの健全性と冷却システムの安定性がキーになる。しかし燃料を乾式容器に入れておけば、冷却は自然循環の空冷でよく、動力に頼らなくても冷却が保てる。また、容器の健全性は外観の観察で保てる。安全性と安定性の実績は米国で実証されている。地震と津波対策は米国にはほとんどないので日本独自の対策が必要だが、難しいことではない。
 再稼動をしないことを前提条件として、乾式貯蔵について地元と真摯に話し合う必要がある。(Y)

*脱原発・東電株主運動ニュースNo.265(2017年5月14日発行)より。

福島事故損害賠償訴訟 前橋地裁判決、東電と国の責任を認める
 1 東京電力は津波を予知したことを認めた!
 3月17日、前橋地方裁判所は、全国で提起されている東京電力福島第一原子力発電所事故による被害の賠償を求める集団訴訟の中で初めての判決を言い渡しました。
 この判決は、福島第一原発事故の原因について詳細に事実を認定し、東電と国の責任について判断を示しています。
 判決は、原子力損害賠償法3条にもとづく東電の無過失責任を認め、民法709条の責任については請求ができないとして否定しました。
 しかし、判決は、2002年7月に政府の地震調査研究推進本部が公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(いわゆる推本長期評価)について、この長期評価は、地震学者の見解を最大公約数的にまとめたものであり、考慮しなければならない合理的なものであること、長期評価が波源モデルを示していなくとも一般的な手法であったなどとして、東京電力に、原発の非常用電源設備を浸水させる程度の津波の到来について予見可能性があったことを認めました。
 さらに、2008年5月の段階で、東電設計の実施した津波シミュレーションの結果(いわゆる15.7メートルの津波シミュレーション)が東電の社内で共有されたことから、会社としてこのような津波を予知したと判断しています。この点は、東電役員の民事・刑事責任についても決定的な事実であり、株主代表訴訟や刑事裁判の判断にも影響を与えるきわめて重大な判断だといえます。
 そして、災害を回避するためにも、給気ルーバをかさ上げして、開口部最下端の位置を上げること、配電盤と空冷式非常用ディーゼルを建屋の上階に設置する、非常用ディーゼル発電機の高台設置などをしていれば事故は発生しなかったとして、事故の回避の可能性があったことを認めました。
 このように、事故の原因と東電の過失については、原告の主張をほぼ認める判決となっています。東京電力の不法行為責任は否定されましたが、以上のような過失の存在が、慰謝料の考慮要素とされています。
2 国の国家賠償責任を認める
 さらに、国についても、2006年9月に耐震バックチェックが開始され、同年10月には津波対策を急ぐよう電力各社に原子力安全保安院が指示した事実を重視し、それから約1年が経過した2007年8月頃の時点で規制権限を行使し、津波対策の改善を命令すべきであったとし、その権限の不行使についての違法性を認めました。この点も、きわめて重要です。
 これまで国は、原子力を推進してきた道義的な責任にもとづいて、様々な支援策を講じてきましたが、法的な責任はないという立場を貫いてきました。特に、国は、本年3月末をもって区域外避難者への無償の住宅提供を打ち切るという帰還政策を進めてきました。
 この事故による被害には、事故による避難も含まれます。国に法的責任があるとされた以上、このような避難者切り捨ての政策を続けることは許されません。直ちに帰還促進政策を見直さなければなりません。
3 損害の評価については不十分
 このように、事故の原因と法的責任の有無の判断については、判決は正当な判断を示しましたが、原告の皆さんに対する損害の評価については、きわめて低い水準しか認めませんでした。
 この事故は、地域で生活してきた住民の、生活と生業を根こそぎ奪い、地域で積み重ねられてきた人生そのものを破壊しました。ところが、判決は、避難区域内の原告ですら、既払金を除いて、最高額が350万円、最低額は75万円の賠償です。認定された被害額が少額であったため既払額を超えず棄却となった原告が72名中53名にも及びました。
 このような判決結果は、損害の正確な認定にもとづくものとは到底認められません。裁判所が、この事故の被害の深刻さ、とりわけ「ふるさとの喪失」という損害の深層をどこまで正確に理解していたのか、疑問に思います。
 原子力損害賠償審査会の定めた中間指針の基準は、行政による早期・最低限の救済策であり、それ以上の損害があれば、賠償されるべきことは、判決も認めています。
 にもかかわらず、正確な損害の評価をせず、あるべき賠償水準を認めなかった判決は、国の政策・財政に配慮して司法の役割を放棄したものといわざるをえません。続く全国の判決ではこの点の見直しを図ることが重大な課題となりました。
4 区域外避難について
 さらに、判決は、区域外避難者を避難区域内からの避難者と区別し、一層低い賠償しか認めませんでした。この点も、非常に残念です。
 区域外の原告らは、目に見えない放射線による健康への影響に不安を感じ、自らと子どもたちの安全を確保するために、その生活を犠牲にして避難をしたのです。
 福島では、公表されているだけで200人近い子どもに甲状腺ガンの発生が報告されています。リスクが科学的に否定できないものである限り、予防原則に従って行動することは合理的な判断・行動として認められるべきです。
 このことは、2012年に成立した子ども被災者支援法でも明確に確認されていたことです。この点の判断も、今後の先例としてはならないものだと思います。
海渡雄一(脱原発弁護団全国連絡会 共同代表)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.264(2017年4月9日発行)より。
東電委員会から見えるもの――原発と東電の延命で誰が何を負担する
 東京電力救済のために作られた経産省の「東電委員会」が、12月9日に21.5兆円の後始末費用の見積もりを明らかにした。「福島第一原発の廃炉・汚染水対策」に8兆円、被災者への賠償に7.9兆円、放射能汚染の除染に4兆円、廃棄物中間貯蔵に1.6兆円などとなっている。
 そして、それらの一部を新電力の使う託送料金(東電など9電力が持つ送電線を使用する料金)に算入することを認めるとしている。

 その中でも最も理解不可能なのは、「過去分」とされる原発事故対策コストだ。
 新電力が支払う託送料金に含まれるのは、原子力損害賠償支援機構から東電を通じて支払われる賠償金のうち、2400億円に相当する金額であるとされる。計算の根拠は「1966年度の原発運転開始から2010年度の原子力損害賠償支援機構法が作られる前年まで」をベースにしている。

 そもそも、電気料金は電気供給約款(契約)である。例えば民法で認められる不当利得返還請求権の時効期間は10年であるが(民法167条1項)、公共料金である電気料金については、遡及請求できるのは2年までだ(民法173条1項)。ところが1966年から2010年までの期間を「遡って」支払えというのでは、不当請求でしかない。会計の専門家もいたはずの委員会で、どうしたらこんな「超法規的」な方法が決められるのか。

 託送料金の計算は、電気事業法に基づく経産省告示(一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則)の内訳で、例えば「使用済燃料再処理等既発電費」として規定される。
 これまで原発の電気を使ってきた顧客が、2005年から本格化する電力自由化で特定規模電気事業者から電気を買うようになったら、その顧客から既発電分にかかる使用済燃料再処理費用、つまり原発の付けを回収することにしたもの。

 2005年から使用済核燃料再処理費用が算入された際には、省令改正の告示として規定された。法改正ではなく、国会論議を行う場もない。こんなことが次々に行われるとしたら、廃炉・汚染水対策は全面的に付け替えることが出来てしまう。そんな重要な政策の変更を国会議論もせずに決めようとしている。
 これらの問題点を以下に箇条書きで記述する。

1.福島第一原発事故に関し、東電の経営者、株主、銀行等大口債権者の責任は問わないまま、賠償費用等について「国民負担」を前提に議論されていることは、本末転倒である。また、巨額で長期にわたる問題を、経済産業省令の改正だけで国会の議決さえしない決定方法は民主主義の根幹を揺るがす。

2.福島第一原発事故の事故処理・賠償費用の合計を21.5兆円とした金額の推計が正当かどうかとは切り離され、負担方法だけが論じられた結果、さらに巨額の負担も転嫁可能な構造が作られた。

3.原子力損害責任賠償法(原賠法)で予定した1200億円が大幅に不足することを「事故に備えて積み立てておくべきだった過去分」などという考え方で事後的に負担を求めるのは非合理であり、民法上も不当だし、常識的にもありえない。これは原賠法の負担額を実態つまり福島第一原発事故の負担に合わせて設定し直し、それに見合う損害保険料を原子力事業者から広く徴収すべきである。

4.東京電力が責任を取った上でさらに不足する賠償・事故処理費用について東電以外の負担がありえるとしたら原子力の発電事業者までであり、新電力のユーザーが支払う「託送料金」での回収は受益者負担原則に反し、送電会社の不当利得に当たる。これらは当然「原発の発電コスト」として原子力事業者から回収すべきだ。

5.世耕経産大臣の言うように廃炉・賠償費用を含めてもなお、原発が低コストであるというのならばなおさら、原子力事業者の負担とすべきだ。

6.福島第一原発事故の事故処理費用について、「送配電部門の合理化分(利益)」から負担することは、本来は託送料金の値下げに当てるべきものを、直接関係のない費用に充てることとなり、「電力システム改革」の趣旨にも反し、極めて不当である。

7.東電福島第一原発以外の、これまで使ってきた原発の廃炉についても所有する事業者の責任で行うのが原則であり、減価償却制度で既に手当済みである。
(Y)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.262(2017年1月15日発行)より。
福島沖の地震で危険性がクローズアップ
 11月22日午前5時59分頃、福島県沖を震源とする地震(M7.4)が発生した。この地震の影響で福島第二原発3号機の使用済燃料プール冷却ポンプが停止した。

 現在3号機の燃料プールには2360体の使用済燃料が保管されている。その他に184体の交換用未照射燃料があるので、合わせて2544体入っている。
 冷却用に水を循環させているが、これが止まるといずれ冷却が出来なくなり、3.11の悪夢がよみがえる。

 水の投入が7日止まると、プール水の温度は65度を超えるとされる。10日以上止まると燃料プールは乾上がり、崩壊熱で熔け出すことにもなりかねない。地震でプールが破壊されれば、急激にそれが起きることになる。

停止確認の時間と方法
 ポンプの停止確認は、東電の説明では次のようなものだ。
 「6時10分頃、3号機使用済燃料プール冷却浄化系ポンプにおいて、スキマーサージタンク水位低警報が発生し同ポンプが停止」した。停止時点で元の水面から2mほど下がっていた。
 地震発生からタンク水位低の信号発信まで約10分、また「頃」との記載が気になるところだ。警報発報ならば百分の一秒単位で記録が残る。

 ポンプの警報を何時確認したのか、リアルタイムのことなのか、時間差があるのか。規制庁のメールでは「地震に伴う確認を行ったところ、3号機の使用済燃料プール冷却系が停止していることを確認」となっており、東電発表とはやや異なっている。

 スキマサージタンクとは、プールに隣接した冷却水を溜めるタンクで、高さが8mほどある。このタンクにはプールを通った冷却水が入り、浄化系を通って戻される。その系統に付けられているポンプが止まった。

 警報と同時にポンプを止めたのは、タンクの水がなくなった場合、ポンプが空回りして壊れる可能性があることと、タンクや配管に破損があり漏えいが続く可能性をみているのであろう。

 しかしポンプ停止は冷却水の喪失を意味するのだから、別系統のバックアップシステムが稼働してしかるべきである。
 なお、ポンプは現場に確認に行った作業員が破損などがないことを確認した上で、約1時間半後の7時47分に復旧している。

警報の原因
 スキマサージタンクの水位が低下した原因は、次のように推定されている。
 地震に伴ってプールに大きな揺れが伝わり、水面が大きく揺れた。その結果、プールからスキマサージタンクへと水が大量に落下した。この時は水位が上がったはずだ。

 さらにプールの水面が跳ね上がる「スロッシング現象」が起きてプール水が溢れ、排水系統に流れた。結果としてプール-スキマサージタンク-配管-ポンプ-浄化装置-配管-熱交換器(原子炉補機冷却系の冷却水で冷やす装置)-配管-と流れる冷却水全体の循環量が減少した。

 プールからオーバーフローして落ちてくる水がなくなると、他に水が入る経路を持たないスキマサージタンクの水位は低下する。それを検知してポンプが止まった。プールには他から補給される水がなかったため、停止していた90分ほどで、プール水の水温が29.3度から29.5度に上がったとされる。

電源喪失
 この地震により一部の系統で電源が失われ、モニタリングのダストモニターが停止したと報じられている。地震による影響を受けたのは具体的には何処なのかは未だ明らかにされていない。

 ダストモニターの停止は放射線量の増大には繋がらないが、系統内に放射性物質が流れても検知できなくなるので、環境や労働者への影響を未然に防止する手段の一つが止まったことになる。これは小さな問題ではない。

 小さな揺れでもいくつかの異常が生じた。この10倍の揺れだった3.11では、もっと大規模な破壊が生じた。
 70ガルにも満たない揺れでポンプが停止し停電も起きたことをどう考えるのか。3.11から5年8ヶ月も経ってこの体たらくだ。

プールのリスクを甘く見るな
 福島第一原発事故後、使用済燃料プールの危険性が大きくクローズアップされた。冷却が継続できなくなると、炉心溶融よりも酷い災害を引き起こすことが初めて認識された。再認識ではない。それまではプールの危険性を見ていなかったのである。

 その影響は今も引きずっている。何処の原発もみな、大量の使用済燃料をプールに抱え込んだままだ。本来は3年分程度の容量しか持っていなかったはずなのに、いつのまにか大容量になっていった。福島第一原発6号機のプールは管理容量約1000体に対して、同じ110万kWの福島第二原発は、いずれの号機も2000体前後の管理容量で、倍の規模に拡張されている。

 再処理計画が進まず、短期間で再処理工場に搬出することが出来なくなった結果である。
 燃料プールに大量の使用済燃料を抱えることで「格納容器の外に巨大なリスク」を置き残す結果になった。
 それが3.11の時に4号機使用済燃料プールの危険性として浮上し、最悪の場合は強制避難170km以上、3000万人の広域避難となりかねない事態を生じた。そうならなかったのは偶然の結果と言ってよい。

 教訓は、使用済燃料を安全に管理するために、乾式貯蔵と呼ばれる方法で一時貯蔵を進めることだった。水を使う強制冷却は冷却材喪失に耐えられない。

 乾式貯蔵方式とは、密封された鋼鉄またはコンクリートとステンレスの容器に水と燃料を詰め込み、熱は金属表面からの空冷で冷やし続ける方法だ。外部に冷却水がなくても冷えるし、動力がなくても冷やせる。ただし、燃料の発熱量を下げておく必要があり、10年以上はプールで強制冷却をしなければならない。

今も津波対策はない
 今回の地震でも第一と第二で1.0~1.6mの津波が観察されており、幸い敷地浸水に至る高さはなかったものの、例えば防潮堤を越える場合は、大規模な放射能放出を引き起こす危険性が高いことも再確認すべきだ。
 そのため建屋の密封化や敷地内汚染水の回収が進められているが、進んでいるとは言えない。

 敷地を襲う津波の高さは、東電自らの予測でも、東北地方太平洋沖地震を経た今日では、26m(算術平均)または36m(95パーセンタイル)にもなる恐れも否定できない。ところが恒設の防潮堤は、建設予定も無い。

 福島第一原発では共用プールに入りきれない4号機などからの燃料を、ドライキャスクによる乾式貯蔵とした。この貯蔵施設がある地点は海抜40mほどで、津波の影響は受けないだろう。しかし全燃料体を乾式貯蔵に移行していないので、プールに残された燃料は依然として、建屋損傷や地震による冷却停止のリスクに晒されている。
 第一も第二も、まず使用済燃料の安全確保に最優先で取り組むべきである。(Y)

*脱原発・東電株主運動ニュースNo.261(2016年12月11日発行)より。


プロフィール

脱原発・東電株主運動事務局

Author:脱原発・東電株主運動事務局
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