脱原発・東電株主運動
NUCLEAR PHASE-OUT TEPCO SHAREHOLDER'S MOVEMENT
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東電委員会から見えるもの――原発と東電の延命で誰が何を負担する
 東京電力救済のために作られた経産省の「東電委員会」が、12月9日に21.5兆円の後始末費用の見積もりを明らかにした。「福島第一原発の廃炉・汚染水対策」に8兆円、被災者への賠償に7.9兆円、放射能汚染の除染に4兆円、廃棄物中間貯蔵に1.6兆円などとなっている。
 そして、それらの一部を新電力の使う託送料金(東電など9電力が持つ送電線を使用する料金)に算入することを認めるとしている。

 その中でも最も理解不可能なのは、「過去分」とされる原発事故対策コストだ。
 新電力が支払う託送料金に含まれるのは、原子力損害賠償支援機構から東電を通じて支払われる賠償金のうち、2400億円に相当する金額であるとされる。計算の根拠は「1966年度の原発運転開始から2010年度の原子力損害賠償支援機構法が作られる前年まで」をベースにしている。

 そもそも、電気料金は電気供給約款(契約)である。例えば民法で認められる不当利得返還請求権の時効期間は10年であるが(民法167条1項)、公共料金である電気料金については、遡及請求できるのは2年までだ(民法173条1項)。ところが1966年から2010年までの期間を「遡って」支払えというのでは、不当請求でしかない。会計の専門家もいたはずの委員会で、どうしたらこんな「超法規的」な方法が決められるのか。

 託送料金の計算は、電気事業法に基づく経産省告示(一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則)の内訳で、例えば「使用済燃料再処理等既発電費」として規定される。
 これまで原発の電気を使ってきた顧客が、2005年から本格化する電力自由化で特定規模電気事業者から電気を買うようになったら、その顧客から既発電分にかかる使用済燃料再処理費用、つまり原発の付けを回収することにしたもの。

 2005年から使用済核燃料再処理費用が算入された際には、省令改正の告示として規定された。法改正ではなく、国会論議を行う場もない。こんなことが次々に行われるとしたら、廃炉・汚染水対策は全面的に付け替えることが出来てしまう。そんな重要な政策の変更を国会議論もせずに決めようとしている。
 これらの問題点を以下に箇条書きで記述する。

1.福島第一原発事故に関し、東電の経営者、株主、銀行等大口債権者の責任は問わないまま、賠償費用等について「国民負担」を前提に議論されていることは、本末転倒である。また、巨額で長期にわたる問題を、経済産業省令の改正だけで国会の議決さえしない決定方法は民主主義の根幹を揺るがす。

2.福島第一原発事故の事故処理・賠償費用の合計を21.5兆円とした金額の推計が正当かどうかとは切り離され、負担方法だけが論じられた結果、さらに巨額の負担も転嫁可能な構造が作られた。

3.原子力損害責任賠償法(原賠法)で予定した1200億円が大幅に不足することを「事故に備えて積み立てておくべきだった過去分」などという考え方で事後的に負担を求めるのは非合理であり、民法上も不当だし、常識的にもありえない。これは原賠法の負担額を実態つまり福島第一原発事故の負担に合わせて設定し直し、それに見合う損害保険料を原子力事業者から広く徴収すべきである。

4.東京電力が責任を取った上でさらに不足する賠償・事故処理費用について東電以外の負担がありえるとしたら原子力の発電事業者までであり、新電力のユーザーが支払う「託送料金」での回収は受益者負担原則に反し、送電会社の不当利得に当たる。これらは当然「原発の発電コスト」として原子力事業者から回収すべきだ。

5.世耕経産大臣の言うように廃炉・賠償費用を含めてもなお、原発が低コストであるというのならばなおさら、原子力事業者の負担とすべきだ。

6.福島第一原発事故の事故処理費用について、「送配電部門の合理化分(利益)」から負担することは、本来は託送料金の値下げに当てるべきものを、直接関係のない費用に充てることとなり、「電力システム改革」の趣旨にも反し、極めて不当である。

7.東電福島第一原発以外の、これまで使ってきた原発の廃炉についても所有する事業者の責任で行うのが原則であり、減価償却制度で既に手当済みである。
(Y)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.262(2017年1月15日発行)より。
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福島沖の地震で危険性がクローズアップ
 11月22日午前5時59分頃、福島県沖を震源とする地震(M7.4)が発生した。この地震の影響で福島第二原発3号機の使用済燃料プール冷却ポンプが停止した。

 現在3号機の燃料プールには2360体の使用済燃料が保管されている。その他に184体の交換用未照射燃料があるので、合わせて2544体入っている。
 冷却用に水を循環させているが、これが止まるといずれ冷却が出来なくなり、3.11の悪夢がよみがえる。

 水の投入が7日止まると、プール水の温度は65度を超えるとされる。10日以上止まると燃料プールは乾上がり、崩壊熱で熔け出すことにもなりかねない。地震でプールが破壊されれば、急激にそれが起きることになる。

停止確認の時間と方法
 ポンプの停止確認は、東電の説明では次のようなものだ。
 「6時10分頃、3号機使用済燃料プール冷却浄化系ポンプにおいて、スキマーサージタンク水位低警報が発生し同ポンプが停止」した。停止時点で元の水面から2mほど下がっていた。
 地震発生からタンク水位低の信号発信まで約10分、また「頃」との記載が気になるところだ。警報発報ならば百分の一秒単位で記録が残る。

 ポンプの警報を何時確認したのか、リアルタイムのことなのか、時間差があるのか。規制庁のメールでは「地震に伴う確認を行ったところ、3号機の使用済燃料プール冷却系が停止していることを確認」となっており、東電発表とはやや異なっている。

 スキマサージタンクとは、プールに隣接した冷却水を溜めるタンクで、高さが8mほどある。このタンクにはプールを通った冷却水が入り、浄化系を通って戻される。その系統に付けられているポンプが止まった。

 警報と同時にポンプを止めたのは、タンクの水がなくなった場合、ポンプが空回りして壊れる可能性があることと、タンクや配管に破損があり漏えいが続く可能性をみているのであろう。

 しかしポンプ停止は冷却水の喪失を意味するのだから、別系統のバックアップシステムが稼働してしかるべきである。
 なお、ポンプは現場に確認に行った作業員が破損などがないことを確認した上で、約1時間半後の7時47分に復旧している。

警報の原因
 スキマサージタンクの水位が低下した原因は、次のように推定されている。
 地震に伴ってプールに大きな揺れが伝わり、水面が大きく揺れた。その結果、プールからスキマサージタンクへと水が大量に落下した。この時は水位が上がったはずだ。

 さらにプールの水面が跳ね上がる「スロッシング現象」が起きてプール水が溢れ、排水系統に流れた。結果としてプール-スキマサージタンク-配管-ポンプ-浄化装置-配管-熱交換器(原子炉補機冷却系の冷却水で冷やす装置)-配管-と流れる冷却水全体の循環量が減少した。

 プールからオーバーフローして落ちてくる水がなくなると、他に水が入る経路を持たないスキマサージタンクの水位は低下する。それを検知してポンプが止まった。プールには他から補給される水がなかったため、停止していた90分ほどで、プール水の水温が29.3度から29.5度に上がったとされる。

電源喪失
 この地震により一部の系統で電源が失われ、モニタリングのダストモニターが停止したと報じられている。地震による影響を受けたのは具体的には何処なのかは未だ明らかにされていない。

 ダストモニターの停止は放射線量の増大には繋がらないが、系統内に放射性物質が流れても検知できなくなるので、環境や労働者への影響を未然に防止する手段の一つが止まったことになる。これは小さな問題ではない。

 小さな揺れでもいくつかの異常が生じた。この10倍の揺れだった3.11では、もっと大規模な破壊が生じた。
 70ガルにも満たない揺れでポンプが停止し停電も起きたことをどう考えるのか。3.11から5年8ヶ月も経ってこの体たらくだ。

プールのリスクを甘く見るな
 福島第一原発事故後、使用済燃料プールの危険性が大きくクローズアップされた。冷却が継続できなくなると、炉心溶融よりも酷い災害を引き起こすことが初めて認識された。再認識ではない。それまではプールの危険性を見ていなかったのである。

 その影響は今も引きずっている。何処の原発もみな、大量の使用済燃料をプールに抱え込んだままだ。本来は3年分程度の容量しか持っていなかったはずなのに、いつのまにか大容量になっていった。福島第一原発6号機のプールは管理容量約1000体に対して、同じ110万kWの福島第二原発は、いずれの号機も2000体前後の管理容量で、倍の規模に拡張されている。

 再処理計画が進まず、短期間で再処理工場に搬出することが出来なくなった結果である。
 燃料プールに大量の使用済燃料を抱えることで「格納容器の外に巨大なリスク」を置き残す結果になった。
 それが3.11の時に4号機使用済燃料プールの危険性として浮上し、最悪の場合は強制避難170km以上、3000万人の広域避難となりかねない事態を生じた。そうならなかったのは偶然の結果と言ってよい。

 教訓は、使用済燃料を安全に管理するために、乾式貯蔵と呼ばれる方法で一時貯蔵を進めることだった。水を使う強制冷却は冷却材喪失に耐えられない。

 乾式貯蔵方式とは、密封された鋼鉄またはコンクリートとステンレスの容器に水と燃料を詰め込み、熱は金属表面からの空冷で冷やし続ける方法だ。外部に冷却水がなくても冷えるし、動力がなくても冷やせる。ただし、燃料の発熱量を下げておく必要があり、10年以上はプールで強制冷却をしなければならない。

今も津波対策はない
 今回の地震でも第一と第二で1.0~1.6mの津波が観察されており、幸い敷地浸水に至る高さはなかったものの、例えば防潮堤を越える場合は、大規模な放射能放出を引き起こす危険性が高いことも再確認すべきだ。
 そのため建屋の密封化や敷地内汚染水の回収が進められているが、進んでいるとは言えない。

 敷地を襲う津波の高さは、東電自らの予測でも、東北地方太平洋沖地震を経た今日では、26m(算術平均)または36m(95パーセンタイル)にもなる恐れも否定できない。ところが恒設の防潮堤は、建設予定も無い。

 福島第一原発では共用プールに入りきれない4号機などからの燃料を、ドライキャスクによる乾式貯蔵とした。この貯蔵施設がある地点は海抜40mほどで、津波の影響は受けないだろう。しかし全燃料体を乾式貯蔵に移行していないので、プールに残された燃料は依然として、建屋損傷や地震による冷却停止のリスクに晒されている。
 第一も第二も、まず使用済燃料の安全確保に最優先で取り組むべきである。(Y)

*脱原発・東電株主運動ニュースNo.261(2016年12月11日発行)より。
東電を巡る目まぐるしい展開を読み取れ――誰が何を負担するのか? 疑問符ばかりが並ぶ
東電が廃炉費用を全国民に請求?
 9月16日、東電の廃炉費用が当初見積もりを大幅に超え巨額に上ることから、「東電救済」のために、政府が「国民の負担8兆円超を検討」しているとマスコミ各社が一斉に報じた。

 原発の廃炉・賠償費用について東電は「福島第一原発の廃炉に4兆円、賠償に3兆円、その他の原発の廃炉費用に1.3兆円」などと見通しを明らかにしていた。しかしこんなどんぶり勘定に根拠などない。

 その後の10月31日、廣瀬社長は記者会見で、福島第一原発の廃炉については「収益向上とコスト削減に取り組むことで、国民に負担をかけずに廃炉費用を捻出したい」と述べた。
 若干軌道修正したかに見えるが、東電の分社化問題が「東電委員会」で議論されており、福島第二や柏崎刈羽原発の廃炉は別といったところだろう。

 さすがに経産省内でも、こんな東電救済に国民の理解は得られないとの声もあるという。また、河野太郎衆議院議員もブログで批判している。これで「原発が安いというのは嘘だった」ことが誰の目にも明確になったのではないかと。いまさら感が強いが。

 原発事故を引き起こしたのは東電であり、責任は全て東電が負うべきとの考え方は、事故後に「原子力損害賠償支援機構」を作り、「放射性物質汚染対処特措法」により賠償等の費用調達の制度を構築させている時から、信義則の問題として指摘されてきた。

 機構法設立時の附帯決議でも「東電救済が目的ではない」とし、東電による賠償の停滞を招くことがないようにと、明記されている。交付国債の形で東電に支払われる額は既に7兆7700億円に達し、早晩9兆円の枠を超えるが、あくまでも賠償に回すべきものであり、設備投資に使うことは出来ない。

 しかし一方では、補償に当てるべき資金が「支払い猶予」状態であることで、東電は利益の大半を柏崎刈羽原発の再稼動準備や電力自由化に伴う事業に投じている。これは大問題でありモラルハザードを引き起こす。

 なお、支援機構からの資金は税金と東電以外の電力会社からの負担金で成り立っている。これを東電は「借入金」ではなく「特別利益」として計上している。電力各社(東電を除く)は「理不尽」と考えている。また、東電は返済しないのではないかと常に疑われている。

 2016年3月期決算で3259億円のもの経常利益を計上しながら、個人や自治体への賠償請求にもろくに応じず、除染費用の支払いもまともにしない。本当に事故の責任を果たそうとしていると言えるのかと、皆が疑問に思っている。そのような中で「青天井の賠償・廃炉費用では責任を持てない」と數土文夫会長が述べたのである。

廃炉費用は「新電力」に?
 東電の廃炉費用を税金で賄うとする文脈の延長線上で、今度は全原発の廃炉費用の一部を、新電力も含めた全電力事業者に割り振るとの「悪だくみ」も進行中だ。
 9月20日に設置された、東電の救済を目的とする「東京電力改革・福島第一原発問題委員会」(東電委員会)に並び、「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」という名の、意味のよく分からない委員会が設置された。

 「電力システム改革委員会」で経産省は、福島第一の廃炉費用と損害賠償費用が巨額に上ることで、東電需要家だけでなく全ての電力消費者に転嫁することを見据えた議論を始めている。

 原子力事故の補償のための資金は、「事故以前から確保されるべきだった」が、「措置が講じられず電気料金に算入することができなかった」ため、「安い電気を利用した需要家に遡って負担を求めるのが適当」などと記載している。(「」内は東洋経済11/3記事より引用)
 「東電委員会」では福島第一原発や事故処理にかかる費用以外の、他電力が保有する原発を含む廃炉費用を、原則として、すべての電力利用者に負担させる素案が事務局(経産省)から示されている。

 2つ合わせれば、原発の廃炉費用は「新電力が送電線を使う際の利用料に廃炉費用を上乗せし、大手が回収する案を提示」して「新電力が上乗せ分を電気料金に転嫁すれば、負担は利用者に回る。」ことになるし、「福島第一原発の廃炉対策もあわせて議論する。」という。(「」内は毎日新聞9/28記事より引用)

 これでは原発が安いどころではない。低レベルな発想しか出来ない官僚と、原発にしがみつき永遠に「改革」などする気のない既存の電力会社の性根が露骨に表れている。断固として阻止しなければならないが、付け加えるならば、これほど酷い案を公表し、非難を浴びることを承知でやっているのだろう。有識者会議で批判され、そのうえで次に出てくる提案こそが本命だろうから、警戒を強めなければなるまい。

分社化で逃げろ?
 10月25日、東電委員会では経産省が「東電原発分社化案」を示した。現在、東電ホールディングスが保有する福島第一、第二、柏崎刈羽原発のうち、再稼動可能な柏崎刈羽原発(ただし案では、ここまで具体化されてはいない)を東電から切り離す作戦である。

 柏崎刈羽原発再稼働の最大の障壁が「フクイチ事故検証」「東電への不信感」だと分析したのかもしれないが、これほどまでに市民を嘲ける案もないだろうと怒りが湧く。
 この分社化案には先があり、例えば東北電力も原発部門を分社化し、地震や津波で被災したうえ地元の強い反対(女川の場合)があり再稼働が困難な女川、東通原発を東電の分社化後の会社とくっつけようと経産省は画策しているようだ。

 東電と中部電で燃料調達用に合弁子会社を作った経緯もあるので、電力各社の収益を圧迫する原発部門を切り離し、集中を図ることで生き残り戦略を構築するとの発想だろう。ただし東北電は全く乗り気ではない。

 しかし、ここにはとんでもない大問題がある。
 原発会社は分社化後におそらく株式非公開会社になるであろう。東電など元の会社が株式を出資割合で持ち合う。

 東電など電力会社から切り離されるから、例えば東電株主総会でいくら質問をしても「他の会社のことだから答えられない」となる。東電など各電力会社に対する、規制当局の制御も利かない。ただ原発保有会社と規制当局の関係だけが新たに作られる。
 原子炉等規制法にも抵触するが、原発推進を掲げる政府なので、お手盛りで法改正をして「問題なし」とするのは当然。

 結果として重要な情報は何も公表されず、ただ規制委員会に出された審議資料が「黒塗り」や「白抜き」状態で部分開示されるだけになることは火を見るよりも明らかだ。
 分社化での原発推進は、現在よりも遙かに秘密に閉ざされ、さらに危険な状況を作り出すのである。(Y)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.260(2016年11月6日発行)より。
みんなが米山って書いたから 10月16日は脱原発記念日。
 今回の新潟県知事選挙は、実質的な原発の県民投票となった。
 選挙に先立つこと約1ヶ月前の泉田裕彦知事の突然の立候補取り止めは、森民夫氏を筆頭とする県内自民党、電事連関係者によってなされたフェリー問題の焦げ付きの責任を濡れ衣として知事に押し被せ、知事選の争点隠しを図る強引な手口のせいだった。

 県民紙とも言うべき新潟日報がそのお先棒を担ぎ、県からの正式なコメントも掲載しないという異常事態の中で、泉田氏は、知事選の争点は柏崎刈羽原発の再稼働問題であり、自分が出るとその論争ができなくなると言って立候補を取り止めたのだった。

 その判断は正しかったとしても、代わりの候補者を擁立することは困難を極めた。規制委員会の結論を受けて再稼働の判断を迫られる日は近いのだ。国と電力業界あげての攻勢が県知事一人の上に向かうのはもちろんだ。わざわざそんなところにノコノコと出てくれる人はいるだろうか?

 森ゆうこさんをはじめ、野党共闘を担った党首の皆さん、市民連合の代表者たちが必死の思いで探し当てたのが、米山隆一さんだった。しかし、彼の所属する民進党内部で意見が調整できず、連合新潟は対立候補・森民夫氏の推薦を決定し、米山氏は民進党を離党して立候補することとなり、民進党は自由投票を選択した。
 「身を捨てて 越後の川の賽となる」と詠んで米山氏は立ってくれたのだった。

 米山さんの立候補表明は9月23日だった。29日の公示日からすったもんだの毎日が始まる。広い県内を3つに分けて、ポスターが届いたのが当日の未明。1号チラシは10月に入ってから。選挙事務所の電話もなかった。でも、みんな森ゆうこさんの選挙仲間だったから、信頼しあって、揉めたりしなかった。地元の民進党の人たちも何事もなかったかのように選挙運動に参加してくれた。

 医者で弁護士、湯の谷村の出身、維新の会にいたんだって、そんなことしか分からなかった。でも除籍されてまで立ってくれたんだって。泉田さんの路線を引き継いでくれるんだって! いいよそれだけで。ワッサワッサとことが進んでいく。

 医者は医者でも東大出の医者で、医学部の大学院時代についでに司法試験も受かってしまって、ハーバード大学にもいたなんて、入ってくる情報はあきれるほどピカピカだ。どんなに偉そうなやつなんだろうって最初は思ったさ。

 でも会えば、腰は低いし、でしゃばらないし、人の話をしっかり聞いて、すうっと理解してくれる。さすがに落選4回の苦労人だった。地域医療をやっていたんだって、地域の法律相談にも乗ってくれていたんだって。評価は上がる一方だった!

 10月6日は十日町での総決起集会だった。この日に間に合わせて漫画パンフを印刷してもらった! やっと完成したパンフレットは好評で、県内各地で配布してもらえた。1万部刷ったので(注;後で1万部追加)、玄関は箱で埋まり、仕分けする時間もないので箱単位で注文を受けた。

 佐渡、上越、新潟、長岡、三条、刈羽など要請のあったところに郵送した。7日には十日町でおしどりマコ&ケンさんの講演会があって、そちらには福島の武藤類子さんから送られた「原発いらない福島の女たち」の旗も掲げた。

 この日の講演で私は大変なことに気付いてしまった! 安倍内閣は増え続ける放射性残土などの管理保管に行き詰まり、8000ベクレル以下は全国の公共事業で使おうとしている。森民夫氏は建設省出身、安倍から直接推薦状をもらってきたのだ。

 お約束は再稼働ばかりではない。彼の公約の道路作りに、お金と一緒にこいつがやって来ることになっているんだ! これまで泉田知事は、県内で発生した放射能を含んだ汚泥などについて100ベクレル以上のものは現地で厳重に保管するよう指示を出し、東電に引き取りを要求してきた。

 原子炉等規制法では100ベクレル以上のものは黄色いドラム缶に詰めて保管することになっているのだから当然の指示なのだけど、このことも国から嫌われ、国の言うままにしたい県内の市長村長から疎まれる原因になっていた。

 森民夫氏が知事になれば、県内の放射性汚泥もあっという間に外にばらまかれるだろう。彼を支持している土建業の人たちがまず被曝の危険にさらされるのだ。翌日から逢う人毎にそう言って回ったが、どれだけ通じたことやら? 私は、ますますどうしても勝たねばならない、と意を決し、毎日街宣カーの運行表を見て、漫画パンフを積んだ車で追っかけを始めた。

 10日には上越市で決起集会が開かれた。当初200人の会場の予定を800人の規模に拡大して、その会場も一杯になった。ここでは多くの赤ちゃん連れのママやパパが米山氏を囲んだ。赤ちゃんを抱いた米山さんは本当に素敵で、こんな知事が欲しかったと思わずにいられなかった。

 この会場では、もうひとつ事件が起きた。背中の見えてきた相手候補を逆転すると、ナンと候補者が壇上で背広のまま、バク転を披露したのだ。見たかった! いやあホントにここで逆転したのだよ。

 街頭演説について回っていると、日増しに「もう米山さんに投票してきたよ」とそばに来て囁いていくおじ様たちが増えてきた。赤ちゃん連れのママは「それをもう少しください」と寄ってくる。スタンディングをしていると女学生たちが集団で手を振ってくれるようになった。

 新潟市までは遠くてなかなか出掛けられなかったが、最終日直前には、山本太郎さんや蓮舫さんまで応援に駆けつけてくださった。最後の日は、観衆からヨ ネ ヤ マ コールが巻き起こって、大騒ぎだったそうだ。

 かくして新潟決戦は、若き総大将、米山隆一を担いだ野党市民連合の勝利となった。

 森民夫氏は各地で市長、県会議員、市会議員などをズラリとそばに侍らせ、「国との太いパイプで低迷する新潟を救う」と言い募ったが、今度ばかりは県民を手懐けることができなかった。最終盤には、「県庁に赤旗を立てさせるのか!」などという反共チラシを法定ビラ二号として、全県に折り込み広告まで入れた。中央の安倍晋三とスガ官房長官は泉田氏を呼び出し、「自民党候補を応援すると言え」と迫って、予定されていた米山氏への応援メッセージの発表をやめさせた。

 しかし、新潟県民は泉田下ろしの汚さも、自民党と電事連あげての再稼働狙いもしっかりと見抜いていた。結果は6万票以上の差を付け、米山氏が勝利したのだ。保守王国と言われた鹿児島でも、ここ新潟でも民意は脱原発にあると、全国に発信できたことを誇りに思う。

 これからが勝負だ。米山県知事を支え、再稼働を許さず、住民に寄り添う暖かい施策を実施して、国のあり方そのものを変えていけるように県民が新知事を支えていこう。全国の皆様、応援を本当にありがとうございました。(小木曾茂子)
東電の闇――いま起きている報道されない大事なこと
凍土壁は失敗
 凍土遮水壁の1%ほどが凍っていないという推定を東電がしていると報道されている。この有様はいったい何か。

 東電によると、凍結していない場所には水の流れがあり、それを止めるためにセメントを注入するのだという。それで成果が出る根拠は示されていない。具体的な実験例があるわけでもない。またしても「希望的観測」で新たな資金を投ずる。その資金は東電のものではない。凍土壁の建設費用は国が出しているからだ。

 凍土壁は全て政府の「廃炉の研究施設などの整備費用」で賄われている。国民の税金だから湯水のように使っている。しかも、セメントを注入しても、それで止まるわけではなく、水の流れる速度を落とし、凍りやすくするだけという。だが流れが遅くなったとしても凍結する保証はない。それならば、最初からコンクリート壁で止めようとした方がよかった。

 東電が考えるところの「工事が完工したとき」が、どのような姿なのかも分からない。凍結した場合に陸側、海側の地下水の透水量がゼロになるものだと地元は考えていたが、東電は「そんなことは言った覚えがない」との立場だ。
 しかし、本当にゼロにならないことが「織り込み済み」というのならば、東電が凍土壁を稼働した後に計画していることと整合性が取れなくなる。

 計画では、凍土壁で地下水を止めた後にサブドレンも稼働させて建屋流入量を無くし、建屋内の汚染水を全て取り除く。その後に、建屋の漏洩個所を内側から補修して地下水の漏れ込みを無くすとしていた。中の汚染水を完全に抜くためには、建屋の漏水箇所を全て内側から閉じなければならないので、建屋内に入って作業を行う。

 ところが、いつのまにか完全止水はしない計画だと開き直った。具体的には毎日70トンの漏水が「目標量」だとされている。それでは建屋内の止水作業は出来ない。

 いまも凍土壁を越えてくる地下水の量は、実際にはほとんど減っていないのではないかとの疑惑が生ずる。この地下水が原発に到達する経路と量を、改めて説明しなければならない。例えば初期値は35m盤にどれだけの地下水があり、それが35m盤の井戸から汲み上げられる量と地下水として10m盤に行く量に切り分け、10m盤で凍土壁に到達する量とそれを超える量、サブドレン井戸で汲み上げられる量、建屋流入量、10m盤から4m盤に行く量、そこで汲み上げられる量、海に到達する量を計量する必要がある。

 凍土壁の建設前は、800トンの地下水が35m盤から流れてきて、400トンが建屋に、400トンが海にと計算されていたが、それがどうなっているのか。
 また、凍土壁で止まらない場合の第二の方法が何もない。もともと汚染水対策は国の主導で進められているから東電が独自に決められないとの立場であると思われるが、そうであっても第二の方法は考えておくべきだった。

「激変する環境下における経営方針」批判
 東電は7月28日に「激変する環境下における経営方針」という名の同日付東電取締役会作成の文書を公表して記者会見を行うと共に、政府と原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対して要請を行い、今後、廃炉や損害賠償費用の負担のあり方の検討を開始することになった。

 要するに、電力小売りの全面自由化による競争激化を口実に「当初見込みを大きく超えることになる費用負担は国の新たな支出で」との趣旨だが、これは東電の経営責任を国つまり国民の税金で肩代わりせよと言っているのに等しい。このような虫のいい話が、資本主義社会でまかり通ってよいはずがない。

 數土会長や東電経営陣は、廃炉費用の見積もりが立たず、損害賠償費用も含めて費用が「青天井」では経営できないと、筆頭株主である国に迫った。しかし実際にかかる廃炉費用の見積もり一つ示さなかった。
 これだけでも大変なことだが、それに加えて、この文章には読み捨てにしてはならない重大事項が多数書かれているので、いくつか批判する。

 「福島第一原子力発電所の廃炉に向けた体制強化」として「我が国の総力を結集した体制の構築を図」り、「ナショナルチャレンジのための連携強化を図る。」としている。これはいったい何を意味するのか。

 最悪の場合は、廃炉を東電ホールディングスから分離し、廃炉カンパニーごと日本原電を廃炉専業会社として、再編合理化することも含む話なのかもしれない。具体的な資金の流れと共に、現在の考え方がまったく明らかにされていない以上、そのくらいのことはやりかねないと警戒すべきである。もちろん、そんな体制にされれば、資金は東電だけでなく税金から湯水のごとく投入される。あるいは、電源開発促進税のような税制から投入するか、新電力を含む電力料金から投入される可能性もある。いずれにしろ国と東電が適当な会議体を作って決めてよい話では全くない。

 「復興への更なる貢献」として「帰還される被災者の方への安心生活支援等、福島相双地域における復興施策に対して最大限の人的・資金的貢献を行う。」といった記述がある。読み飛ばしてはならない。あえて「帰還者」「福島相双地域」と対象者と地域を局限していることが問題だ。これは例えば茨城県や福島市に住む被害者(社)、被災者(社)は「圏外」、また帰還しない人々も「対象外」とする姿勢とも読み取れる。

 なぜ「全ての被害者」への「安心生活支援、復興施策」としないのか。明らかに切り捨てであり認められない。放射能災害が都道府県、市町村境で止まるあるいは軽減されるなど科学的にもあり得ない。切り捨ては許されない。こういうところに書くべきことではないとして追及し、撤回させるまで批判すべきだ。

 「柏崎刈羽原子力発電所の早期再稼働が可能となる環境を整える。」との記述もある。この文章には期限が特に書かれていないが、経営方針は一般に単年度を指す。長期ならば長期計画などと書くものだ。つまりこれは具体的には、来年度に柏崎刈羽原発の再稼働の環境整備をすると宣言していることになる。

 県の技術委員会との議論も終わっていないばかりか、泉田知事の「福島第一原発事故の原因究明が終わっていない段階で再稼働のテーブルには着かない」との主張には一切答えてこなかったのに、このような文書で記載したことは、許されることではない。
 「世界的にもトップレベルの安全性確保により、国内外に対する原子力の社会的責任を果たしていく。」などと記載しているが、原子力防災体制に責任を持たない東電が世界的にトップレベルの安全性など確保できるはずもない。

 こんなことを主張するのであれば、柏崎刈羽原発が冬の気象条件で、30km圏内の住民を避難できる防災体制を、東電が責任を持って構築するべきであろう。

 この問題では東洋経済オンラインが「想定外の賠償・廃炉費用を誰が負担するのか」という記事を出している。信濃毎日新聞は8月24日に「福島の除染 国費投入の理由がない」との題で社説を掲載。「事故を起こした企業として何を最優先するべきなのか。改めて自問しなければならない。」と強く批判した。

 しかし、これだけの大問題にもかかわらず、東電の記者会見を報じた社はあったものの、東電の姿勢を批判、追及した社は残念ながらほとんど見当たらないのが現実だ。
 このような東電にまつわる大きな問題が、いま次々に持ち上がっている。これを追及していく必要がある。(Y)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.259(2016年9月18日発行)より。


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