脱原発・東電株主運動
NUCLEAR PHASE-OUT TEPCO SHAREHOLDER'S MOVEMENT
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再稼働への本当の筋道
 首都圏から原発の電気が消えて早2年8か月を超えた。だが電力需要は下降する一方で、このまま脱原発は可能という空気が漂う。それなのに推進派は、原発の復活をめざして川内、福井で再稼働へと執拗に押しまくる。川内原発は<早ければ>今年度内と期待する向きがあるようだが、まだまだ先はある。ここらで新規制のおさらいをして、原発ゼロ維持のための方策を探りたい。

 福島原発震災は、『日本の原発は「地震・津波などで過酷事故にはならない」「人為ミスや機械の故障等によっても過酷事故には至らない」』などという神話と現実とは違うことを暴き出した。

 原子力規制行政としては、従来の規制において、①大規模な自然災害への対策が不十分、②過酷事故対策を規制の対象にしていない、③いったん設置許可した既設の原発等には最新の基準への適合を求めない、としていたことを特に問題とし、「今回の新規制基準は、これらの問題点を解消」(規制委員会HP)するものとして原子炉等規制法を改正し(12年6月)、新たに原子力規制委員会を設置した(12年9月)。

 ところがこの新規制が分かりにくく、規制委員会がスタートした12年9月の時点で、マスコミ各社はあきれたことに「原発再稼働は来夏が焦点」(日経見出し)といった甘い見通しを流した。明らかに誤報である。審査の工程も確認せず無責任な見込み記事を書くのはやめてもらいたい。

 朝日は「定期検査で停止した原発の再稼働の前提となる新しい安全基準」と書いたが、これも不正確だ。定検後の再起動がお預け(延期)になっている、といった生易しいものではないのだ(ニュース昨年11月号No.232の「『再稼働反対』でいいのか?」参照)。

 こういう私自身、1年前の時点では法的な位置づけの全貌が見通せず、従来の経緯から類推し、法的根拠を確認せずに書いていた(だいたい法律が読めない人間である)。そもそも昨春提示された新基準案は、いわば手、足、目、耳、肺、胃、静脈、動脈、……というように、構造をバラバラにしてパブリックコメントにかけられたのだから、無理もない。

 こうしてできた新規制により、電力会社は、上記③を規定した原子炉等規制法43条の3の14「発電用原子炉施設の維持」(=「発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない」)に基づき「設置許可」をとり直さねばならなくなった。新増設時だけではなく、いったん許可された原発もつねに最新の技術基準に適合していないと違法な状態とされるという意味だ。

 とりわけ今回は①、②に係る基準に達しない限り今後の稼働(発電・売電)はできないので、現在はすべての原発が免許停止状態なのである。

 既設炉のための新基準は、パブコメを経て翌13年7月8日に施行され、PWR(事故を起こした東電とは別タイプの原発)各社はいっせいに設置変更許可を申請した。以来1年5か月が経過したが、規制委・規制庁は膨大な量の作業に追われ、まだ1基も再稼働に至っていない。

 ところが申請当初は「審査期間は半年」との見通しが報道され、今年に入ると「6原発10基、合格へ 春に第1号 夏の再稼働、現実味」(14.1.20産経の見出し)、「規制委が1~2カ所を優先審査」(14.2.20日経)と期待感が高まる。

 3月には九州電力が抜け駆けして川内原発に基準地震動のアップを受け入れ、優先審査の対象となった。これは基準地震動が定まらないと、次のステップの耐震評価のための解析ができないからであるが、上記6原発は軒並み基準地震動のアップに抵抗していたのだ。膨大な解析のやり直しと追加の耐震補強工事などを避けたいからであろう。

 ここでまた「14年夏の再稼働」という予測が流され、4月には先祖返りしたエネルギー基本計画が改訂され、再稼働方針が明記される。ところが、政府、経産省、規制委、地元は再稼働のゴーサインを出す責任を譲り合い、どこも再稼働に自信を持っていないことが露見する。規制委は川内1・2号の審査書案作成作業に集中するとしたため、他の原発は足踏み状態となり、電力、経済界は規制委を批判したり、経産省へ要請行動を起こしたりした。

 7月16日、規制委は川内1・2号の変更申請を了承、審査書案を任意のパブリックコメントにかけた。30日の期間内に約1万7千件の意見が寄せられたが、規制委は火山の大規模噴火等の指摘に耳を貸すことなく、9月10日、正式に基準適合性を認めた。だが、これもイコール再稼働ではない。さらに工事認可、保安規定等の大量な審査が続く。

 審査は、公開されている規制委の審査会合のほかに、非公開で規制庁の審査官による事業者ヒアリングがもたれているのだが、これが凄まじい。優先審査と決まった3月以降は、平日はほぼ毎日長時間にわたって行われ、それは12月現在もなお続いており、川内だけで630回を数える。午前10時から夜19時、ときに22時まで……!

 九電からは100人近い社員が参加、規制庁側審査官もほぼ30人。他電力も数人が傍聴する。これだけのマンパワーを投入し、しかも超過勤務……再稼働を断念すれば不要となるのに、と膨大な無駄にみえてくる。

 九州電力では、事業者ヒアリングを経て再提出すべき工事認可の申請書を、12月第2週にも1号機を先に提出するとしていたが未だのようだ。2号機と保安規定は数週遅れで提出の予定という。これらの審査を完了したのちには、工事等に係る使用前検査、燃料体検査、溶接検査等々、通常の定期検査以上の点検・検査があるはずだ。

 規制法の改正によって、これらの検査はすべて規制委と規制庁が行うこととなった。これまで発電用原子炉については経産大臣、研究用は文科大臣の管轄であったが、今回規制委に一元化された。果たしてこれらの作業をこなしきれるのだろうか。

 ところでこの一連の再審査を、安全審査ではないと規制委員長自身が言う。そのとおり。営業許可を得るための最低の合格ラインにすぎない、合格したからといって優秀とは限らないということだ。

 だが鹿児島県知事はこれを安全に関する国のお墨付きと称し、さらに再稼働の必要性に対する大臣要請を条件として、早々に地元同意を出してしまった。「地元の同意を経て、川内原発は今秋にも再稼働する」「川内原発 事実上“合格”秋にも再稼働」という報道にあおられるようにして。

 だが、前途はまだある。ここまで規制委の審査に時間がかかったのも、10万件近いパブコメ(基準制定の際)や1万7千件の川内認可へのパブコメをはじめとする市民の声などによるのだ。断じてあきらめるまい。(A)

*「脱原発・東電株主運動ニュース」No.243(2014年12月14日発行)に掲載されたものです。
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朝日新聞はバッシングに屈せず、「吉田調書」の続報を出すべき
 朝日新聞バッシングが止まらない。本来、メディアの大きな役割のひとつに「権力の監視」があるはずです。しかし今、いくつもの新聞、週刊誌は「権力の番犬」となって吠えたてています。
 バッシングされている朝日新聞もふがいない。11月12日に発表された第三者委員会の見解も完全に腰が引けています。このままでは権力に屈した「白虹(はっこう)事件」*の二の舞になってしまいます。

 「吉田証言」は信憑性が立証できないものであることは周知の事実。しかし、従軍慰安婦は日本軍が行った戦争犯罪であり、その事実は消し去る事ができない。と、朝日新聞は毅然と闘うべきなのです。池上彰さんのコラムの掲載拒否については明らかに失態ですから、これを前面に出すべきです。
 しかし、朝日新聞の木村伊量社長は、こともあろうに5月20日に特報部がスクープした「吉田調書」の記事を取消し、担当者処分を前面に出して謝罪しました。

 「吉田調書」のスクープは私たち東電株主代表訴訟の闘いにとっても大きな進展でした。これまでに山崎久隆さんをチューターに2回の勉強会を開いていますが、読めば読む程、現場は混乱していたことがわかります。
 携帯電話の充電すらできず、必要な情報が吉田所長の許に届かず、建設時期が異なるために号機毎に仕様や部品が異なり、しかもスキルを持っている担当下請けはおらず、図面を管理している下請けの女性社員は帰宅させてしまっていた……。吉田所長も「何度も死んだと思った」と恐怖を感じていたのです。
 東電本店では「全員撤退」が話し合われ、それを阻止するために菅直人首相が東電に乗り込む。そんな混乱の中で命令違反は起きたのです。起きて当然の混乱でした。

 朝日新聞がすべきことは、用意されていた「吉田調書」の続報を出すことです。内閣府は、この原稿を書いている12日、新たに公開の承諾を得た56人分の政府事故調の聴取結果を公開。合計で75人分が公開になったのも、朝日新聞の調査報道がなかったら実現していないことです。
 福島原発が地震と津波によってどのような事故になり、どのような英雄がいても献身的に闘う作業員がいても混乱してしまったという事実を報道すべきなのです。そしてその作業員がどのように被曝し病にかかっていくか、事故で流れた放射能が日本全土を、世界を汚染していく実態を明らかにすべきなのです。

 私は、ジャーナリストや作家に呼びかけ、朝日新聞に「吉田調書」の続報を出すよう、記者を守るよう「要望書」を提出しました。2日間で一般の方も含め192名の賛同をいただきました。他にも200名以上の弁護士さんが連名の要望書などを出されています。
 しかし今も、新聞社に限らずTV局にも、「原発事故報道はもうやめろ」「政府を批判するのは国賊だ」などと、物騒な脅しとも言える電話やメールが殺到しているとのこと。私たちも、良い報道にはエールを送り、「権力監視」という本来の仕事を報道機関ができるよう支えていかなければならないのです。(K)

*「白虹事件」とは
 1918年、米騒動に関して関西新聞社通信大会が開かれ、各社から寺内内閣への批判が噴出した。その大会の模様を報じた大阪朝日新聞の記事に、革命が起きる兆候を示す故事成語「白虹日を貫けり」があったため、新聞社は刷り直しをしたが、既に1万部が出回っており、当時の帝国憲法下の新聞法に触れるとして弾圧された。
 関西では大阪朝日新聞の不買運動が起こり、右翼団体が朝日新聞社長を襲撃。全裸にして電柱に縛り付け「国賊村山龍平」の札を下げた。それ以降、大阪朝日新聞は寺内内閣に屈服していった。この時代、1917年のロシア革命に影響されて自由主義、社会主義的な論調が新聞紙面に現れ、シベリア出兵に反対、大阪朝日新聞はその急先鋒だった。出兵が迫った7月30日には、全国で60もの新聞が発刊処分になっていた。

*「脱原発・東電株主運動ニュース」No.242(2014年11月16日発行)に掲載されたものです。


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Author:脱原発・東電株主運動事務局
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