脱原発・東電株主運動
NUCLEAR PHASE-OUT TEPCO SHAREHOLDER'S MOVEMENT
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東電株主代表訴訟――これまでの経緯と展望
はじめに
 2011年3月11日の東日本大震災に起因する福島第一原発震災は、発生から4年が経とうとする今でも、約12万人もの人々から故郷を奪い、生きる場を奪っている。
 空間線量が年間1mSvを超える地域は依然として広大に広がり、除染の効果も限定的なのに、高い線量地域においても帰還が行われている。

 未曾有の原発災害を引き起こしたにもかかわらず、東電経営陣をはじめ刑事責任を問われた者はいない。少なくとも損害を被ったり生計を立てられなくなったりした被災者の損害を弁償するくらいは東電経営者が率先してすべきだが、自ら私財をなげうった者はいない。もちろん東電に賠償責任はあるが、それすら遅々として進んでいない。金額は「査定」で値切られて、平均は請求額の半分以下だという。

 賠償金の原資は、市民の支払った電気料金である。これもおかしな話で、例えば東電管内の被災者は自ら支払う電気代から賠償を受けることになる(ただし現在は累計約4兆4000億円を国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構から交付を受けて被災者に支払っている。つまり国費で賄っている状態)。

提 訴
 そもそも東電の引き起こした災害は、東電経営者がまず弁償をすべきであるとし、2011年11月、東電株主が「東電取締役に対する訴え提訴請求書」を東電に提出した。これに対しては12年1月に「訴えない」とした旨の「不提訴理由通知書」が送付された。
 そこで12年3月5日、現在と過去の経営に責任を有する取締役27名に対して「株主代表訴訟」を起こした。この訴訟は株主でなければ提訴できないので、「脱原発・東電株主運動」の会員が原告の中心である。
 裁判の結論が出るのはもっと先だが、その経過で重要な成果がいくつも出ている。

テレビ会議録の公開と吉田調書
 12年6月に始まる口頭弁論で裁判がスタートし、当時から話題になっていた事故当時の本店、原発(福島第一・第二、柏崎刈羽)をつないでいるテレビ会議の映像音声記録を公開するよう求めるとともに、東電に破棄されないようにするため証拠保全の申請をした。現在もテレビ会議録のコピーは裁判所が保管している。このこともありテレビ会議録の公表へとつながった。その結果、震災当時は分からなかった多くの事実が明らかになった。
 なお、東電による記録の公開は「政府事故調査委員会報告が出た後に」行われた。事故報告書に影響を与えるのを避けたとみられる。

 さらに、政府事故調査委員会が行った聴取記録の公表も迫った。これも現在は一部が公開されている。特に吉田調書として知られる、第一原発所長だった吉田昌郎氏の証言が、一部マスキングされてはいるものの公開された。なお、その他の証言録は公表を望まない人の分は公表されていない。株主代表訴訟の被告人の記録も有るのだが、全く公表されていない。
 これらの記録はいうなれば「多大な犠牲を払った国民全ての財産」である。全て公表してしかるべきものということに変わりはない。

補助参加人
 訴えは取締役個人に対して起こされた。東電を訴えているわけではない。むしろ取締役に損害賠償請求を行うように東電に求めているが、「補助参加人」という立場で敵対的に訴訟に参加してきた。これもまた、「どっちを向いている会社か」を明確にしたものだ。被災者への賠償よりも取締役個人の利益を守ろうとする姿勢だ。

 原発震災については、大きく2つの局面で責任が問われている。一つは「予見可能性」、もう一つは「結果回避可能性」である。
 原発を保有し運転してきた東電の責任は、その経営者こそが「発電方式」として原発を選択し、福島(双葉、大熊、楢葉、富岡町)と新潟(柏崎市、刈羽村)に立地したことにある。自動的に行われたわけではなく、経営者の判断と選択によるものだ。
 自然災害により原発が過酷事故(シビアアクシデント)を引き起こすことを予見し、それを回避する義務が経営者には当然にしてある。その義務を怠った経営者にこそ賠償をする第一義的義務がある。

予見可能性
 原発事故の「予見可能性」とは、過酷事故につながる可能性のある事態が発生することを前もって分かるかということだ。「何年にもわたり学会・委員会等の調査・研究報告等により可能性を指摘され、東電自身の試算でも“津波対策”は不可欠であったとの結論にもかかわらず、十分な対策を取らなかったこと、最善の対策である『原発の停止』をしなかったことは善管注意義務違反」と原告は指摘した。

 背景には「原発震災に至るまでの約9年間の諸研究や中越沖地震の教訓などから、被告らは炉心溶融事故を十分予見可能。3.11の4日前には東電自ら過去の大地震を踏まえた試算結果を保安院に報告している事実」が明確に存在するからである。

結果回避可能性
 原発事故の「結果回避可能性」とは、仮に地震や津波に遭遇しても過酷事故に至らないよう、建設や設備や運転管理において対策をすべきことを言う。安全性を考慮して安全保護系統を地震や津波に十分耐えられる構造にするとか、津波対策ならば海抜の高い場所に重要機器を設置するとか、緊急時に備えた対策を策定し、日々訓練と共に十分な対処が出来るように更新を続けるなど、いろいろ考え得る。

 過酷事故が起きても放射能大量放出に至らないように、過酷事故対策を準備するとか、追加の支援策を投入するなどもあるだろう。もちろん最良の結果回避可能性は、事故前に原発を廃炉(または長期休止)にすることであるのは言うまでもない。

津波評価と対策
 東電の予見可能性に関連し、貞観津波などの知見について、収集してはいたが、土木学会原子力部会津波評価部会による津波波源の評価に基づき津波対策を行うこととして、津波評価検討の委託を行ったまま、具体的には何もしなかった。

 2008年の非公式検討のために行われていた会議で「土木学会の断層モデル策定により科学的かつ合理的な安全対策を実現すること」が決定された。福島第一原発震災を食い止める道が絶たれた決定的瞬間である。

 この決定に主に関与したのは、武黒、武藤両取締役である。これらの意思決定に繋がる重要情報は、吉田調書によれば「20年の6月、7月ころに話があったのと、12月ころにも貞観とか、津波体制、こういった話があれば、それはその都度、上にも話をあげています。」と証言している。勝俣会長と清水社長を含む被告人に情報は十分伝えられていたのである。原告は「不知」または報告が「実際上もなかった」なる認否ないし主張をすることは、それ自体嘘以外の何ものでもないと、準備書面10(14年9月25日付)で指摘している。

 この時点で既に敷地標高を超える津波が来る可能性は、多くの研究者により確実視されていたばかりか、東電自らのシミュレーションや試計算においても確認されていた。
 また、津波堆積物調査により、南相馬など原発から数キロのところにも痕跡が見つかっていて、貞観津波などが繰り返し襲ってきた歴史的事実が認められていた。東電自らも行っていた堆積物調査でも、知っていたことだと思われる。

 東電は少なくとも08年頃には対策に必要な情報を保有していた。第二原発の南側に位置する東海第二原発(茨城県東海村)では、別の波源情報に基づいたものではあるが、日本原子力発電は直前に海水ポンプについて対策を実施していた。これは2011年の津波にある程度効果があったことが認められている。
 同じ原子力事業者間でも対策に温度差があり、それが結果を異なるものとした事実は、東電の対応が如何に遅きに失しているかを物語る。「何もしない」ことを決定した経過にこそ、義務違反があると主張してきたのは、その意味でも正当なのである。

告訴のゆくえ
 株主代表訴訟とは別に、市民が東電取締役を含む責任者を「業務上過失致死傷罪」で刑事告訴している。そのうち3名の東電役員に起訴相当、1名に不起訴不当の決定が検察審査会により行われた。
 14年7月31日、東京第五検察審査会は、東京地検が13年9月9日に不起訴処分とした東電元幹部ら42人のうちの3人について、業務上過失致死傷罪で「起訴相当」とする議決を行い公表した。議決は7月23日付、議決書は7月30日付であった。

 検察審査会が「起訴相当」としたのは、勝俣恒久元会長、武藤栄、武黒一郎の両元副社長である。小森明生元常務については「不起訴不当」とした。榎本聡明、鼓紀男元取締役については、権限がないという理由で不起訴相当とされた。起訴相当の検察審査会議決が2回続けば、強制起訴となり、公開の裁判で福島原発事故についての刑事責任の有無が論議される、画期的な裁判が開かれることとなる。

 告訴は刑事責任を問うものであり、民事責任の追及とは異なる基準で行われる。起訴される基準のほうがより厳しい。すなわち起訴相当と議決されたことは、株主代表訴訟にとっても極めて重要である。

審理のゆくえ
 裁判は予見可能性を巡る原告側と被告側の準備書面や求釈明書の往復が続いている。要は文書上で議論をしている段階である。「認める、認めない」「不当だ、正当だ」といったやりとりが続くが、証拠は文献ないし図面等なので、今後は証人調べ、被告人の証言要請など、人への尋問などを求めていくことになる。
 吉田所長が亡くなった今は、証言に登場する記名、無記名の人々に具体的な経過について語ってもらいたいところである。

 これからも法廷内外で、調査、分析、立論、立証が続けられる。それが煮詰められた結果の集大成が、法廷に証拠書類として提出される。
 今後も株主代表訴訟原告としては、できる限りわかりやすいように、法廷においてのプレゼンテーションや資料の配付、販売を通して、東電取締役の責任を追及していこうと考えているので、ご期待願いたい。(Y)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.244(2014年1月18日発行)より。

東電株主代表訴訟ブログ
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