免震装置に重大な欠陥が明らかに 東海第二に耐震性なし
*運転延長認可後の記者会見で答える日本原電・和智副社長(11/7放送 テレビ朝日 報道ステーション)
KYB免震偽装と原発
10月17日、油圧機器メーカーKYBの子会社カヤバシステムマシナリーが製作した免震及び制震装置の検査データで、少なくとも1000台あまりの検査データが偽造されていた疑いのあることが明らかになった問題で、数多くの公共施設に続き、原発の関連施設にもこの制震ダンパーが使用されていることが明らかになった(東京新聞10月18日付他)。
検査データが偽造されたのは免震装置のダンパー(緩衝装置)で、円筒形の容器にオイルとピストンが組み込まれ、オイルの粘性により熱膨張などのゆっくりとした動きは許すが、地震の大きな揺れを抑える役割を持っている。
原発の内部にも同じ原理の装置は大量に使われ、オイルダンパー(油圧防振器)と呼ばれている。
現在のところ原発内部の配管やポンプを吊っている装置には使用されていたとの報道はないが、浜岡原発の非常用ガスタービン発電機6台がある建物の免震装置に使用されているものに偽造の疑いが指摘されている。
非常用ガスタービン発電機は、原発が外部電源と非常用ディーゼル発電機の電源を喪失した際に冷却用電源を供給する、安全上非常に重要な装置だ。2015年2月に敷地の高台40m地点に増設されたもので、高い信頼性と生存性が求められる。ここに性能に疑いのあるダンパーが32台も使われている。
要求される性能を発揮できない可能性のある装置が使われていることは、新規制基準の根底を揺るがす問題として捉えるべきものだが、規制委は事業者の品質管理問題だとして、真剣に対応していない。
免震ゴムもオイルダンパーも偽装
地震多発国で起きた免震、制震装置の検査偽造。何が起きているのか。
免震のメカニズムは、建物の地下階に空間を設け、建物を支える柱構造に免震ゴムを挟んで、地面が建物に対して水平方向に動く力を、ゴムの変形で逃がすことで、揺れが建物に伝わりにくくする方法が一般的だ。これにオイルダンパーを付けて揺れを抑えると共に、免震ゴムの変形を小さくする役割を持たせている。
制震のメカニズムは、建物の各階や大型装置類など重量構造物を支える構造にオイルダンパーを支えとして設置し、地震の揺れを吸収することで建物の変形を抑制し、揺れの影響を低減する役割を持たせる。
オイルダンパーはピストン構造をオイルの粘性で制御するが、緩すぎても堅すぎても役に立たないので、これを検査で確認し建築基準法に定める基準内に収まるよう調節している。
粘性が大きすぎて堅くなっていると、揺れが建物に伝わりやすくなり、変形や破壊が生じる可能性がある。一方粘性が小さすぎると揺れの幅が大きくなり、免震ゴムが破損したり建物が擁壁に激突して大規模損壊に至る可能性が出てくる。
免震ゴムについては、東洋ゴム工業が2015年2月9日、検査データを偽装していたとして国交省に「自主的に報告」したことから発覚した「免震ゴム偽装事件」があり、各地の免震建築物に重大な問題を引き起こした。
免震ゴムと制震ダンパーは、例えば免震重要棟や緊急時対策所など原発施設にも使用されている。偽装された装置類が使われていないか、全原発を止めて総点検すべきだが、規制委員会はこの問題について自主的対応にまかせて何の指示もしていない。
東海第二に耐震性なし
2018年10月25日、衆議院第一議員会館で「東海第二原発の再稼働審査を問う!原子力規制委員会院内ヒアリング集会その4」が「再稼働阻止全国ネットワーク」「とめよう!東海第二原発首都圏連絡会」の共催で開催された。
規制委員会は7月13日の第3回のヒアリング集会後の9月26日、新規制基準に適合するとの審査書を決定した。東海第二原発は11月27日に運転開始40年になるため、今後20年の運転延長も申請している。その最後の審査会合が11月7日に行われ、延長を許可する決定をした。
これに先立ち、10月25日に開かれたヒアリング集会では、規制庁から17名が出席、原電が規制委に提出した工事計画書の認可申請の補正書や審査書案、それに対するパブリックコメントへの回答などを分析して、主催者側が事前に伝えた質問事項13項目に規制庁が答えた。
沢山の問題点が指摘されたが、その場で最も大きな問題としたのは「耐震性の欠如」である。
原発の耐震設計に使われる基準地震動(Ss)については、東海第二の場合、数多くの変遷を辿ってきた。
建設段階、まだ耐震設計審査指針が作られる以前の1972年設置許可申請時には、わずか270ガルで設計され、その後耐震設計審査指針により380ガル、2006年の指針見直しで600ガル(震災後のストレステスト時点でも600ガルを維持)、新規制基準適合申請時点で901ガル、そして最終的には、2014年に提出した補正書で1009ガルにまで引き上げられた。
この結果、建設時には余裕があったはずの耐震性能は、大幅に裕度を削られ、最後には基準地震動の揺れで破壊される可能性が極めて高い原発になっていた。
地震のような複雑系の理論的予測は極めて困難であることは常識であり、国内で記録されてきた地震の揺れから考えても、1009ガルが過小評価であることは、僅か20年程度の最近の地震観測結果からも明らかだ。
特に2007年中越沖地震では、柏崎刈羽原発で1699ガルの地震に遭遇している。その地震はマグニチュード6.8、国内で最大でもない中規模地震である。
理論的予測が困難な場合は、これまでに観測された地震動の全てを超える最大値を保守的に採用すべきだ。その値は少なくとも4000ガルを下回ることはない。
その過小評価された基準地震動に遭遇してさえ、耐えられない部分が、原子炉圧力容器を上部で支える「スタビライザ」(防振装置)と呼ばれるものと格納容器の間の構造部分だ。
このスタビライザの耐震評価値は393メガパスカルだが、基準地震動の発生により生ずる力は実に982メガパスカル。2.5倍にも達するものすごい力(1平方センチあたり9トンあまり)の荷重がかかるのである。
これでは変形し破断する危険性が生ずるが、規制委に出された評価計算書「上部シアラグ及びスタビライザの耐震性についての計算書」では、繰り返し疲労を計算したら地震による揺れで基準値を超える振動の想定回数は40回、それに対し耐えられる限界の値は48回、その累積疲労係数は「0.834」で、1を下回るから合格であるという。
0.834とは、破壊される終局限界のわずか1.2倍であることを意味している。
言い換えるならば、地震の揺れが2割増し、あるいは基準地震動に達する地震が2度起きれば破壊は免れない。
しかも、その破壊が発生するのは、圧力容器を上部で支える重要構造物だ。
圧力容器の相対位置が保てなければ、多数の配管に強い力が掛かり、小口径配管などは瞬時に破断してしまう。特に原子炉圧力容器の真下に取り付けられている制御棒駆動系の配管185本は、わずか直径3センチ、肉厚6ミリあまりである。地震の揺れに伴う圧力容器の変位が発生したらたちまち破断してしまい、制御棒は入らなくなる。
欠陥原発の再稼働を認める規制委
スタビライザの性能は、原電が作成した書類でさえ耐震性がないことが分かった。さらに破断までの裕度は1.2倍。これは規制委自らが「低サイクル疲労に対する裕度は1.5」としている内規にも反している。
自分たちで決めた規制基準を守れないうえ、公開している文書は重要箇所が「白抜き黒枠」で、知ることさえできない。
今回は、消し忘れていた(?)箇所から耐震評価の破綻部分が明確になった。
東海第二はもはや廃炉にするほかに道はない。(Y)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.278(2018年11月11日発行)より
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<追加のお知らせ>
日本原電・東海第二原発の危険性を様々な観点から分析した
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