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福島原発事故から7年半、避難者から東電へ伝えたいこと

脱原発・東電株主運動事務局

これは、2018年10月10日、「東電と共に脱原発を目指す会」で、
原発事故の被害者から東電への意見を届けるという趣旨で、
約15分間話をしていただいたものです。

私は福島県いわき市から、都内に子ども達と避難している母親です。今日は貴重なお時間をありがとうございます。
私は以前から、一度、どうしても東電の皆様に聞いていただきたいことがありました。一人のお母さんの話です。
彼女は私と同じ区域外避難で、7年前は、同じ避難所に身を寄せていました。私は、東電の社屋を見る度に、彼女のことを思い出すのです。

7年前の夏、東電の本社前に、彼女は立っていました。乳飲み子をおんぶして、手には幼い子どもの手を握り、唇を噛み締めて黙って、東電の社屋を見上げていました。
一大決心でここまで来たものの、大きな社屋を前に、なすすべもなく、言いたかったことを何一つ伝えることもできず、ただ、自分の小ささを痛感しながら、黙って立ちつくしていました。
夕方、避難所に戻った彼女は、私にそのことを話してくれました。
『今日、東電前まで行ってきた』
『なんで? 何しに?』
『悔しかったから』
『で、どうだった?』
『ただ、大きなビルがあっただけだよ。そんだけ』
その後は、黙って、2人で涙を流しました。
私は、彼女が、絞り出すような声で『悔しかった』と言ったあの夜のことを忘れることができません。たった一人で東電の本社前まで来るほど、言いたいことがあったのに、その頃の私たちは、ちっぽけな避難者で、こんな場も、一緒に声をあげてくれる仲間もいなかったから、彼女は一人、歩道から、大きなビルを見上げて、涙をうかべて……。
そして、うつむいて避難所に戻ってきたのです。

でも、あの頃も、今も、結局、私たちの思いは変わりません。
『もとの生活を返して』
『当たり前の毎日を、返して』
『夫や子どもたちの笑顔を』
『美しかった山や海を』
『じいちゃんのキノコを、ばあちゃんの山菜を』
『穏やかで、決して声を荒げることの無かった、優しかった頃の夫を』
『ただ、悩みなく、子ども達を抱きしめて、笑顔でいられたあの日々を』
ただ、返してほしいのです。
この7年、これは悪い夢なんだと、目が覚めたら、全てが元通りになっているんだと、祈り続けた日々でした。
でも、現実は残酷です。
この7年間、何一つ、元通りにはなりませんでした。
除染なんて気休め。人の力では、一度播かれた放射性物質は、元には戻せません。
母子避難だった彼女は、やがて経済的にも精神的にも追い詰められ、泣きながら福島へ帰っていきました。でも、今でも私には、『まだ帰って来ちゃだめだよ。土も山も汚染されたままだから』と泣きながら言います。

 ご存じの通り、放射性物質は福島だけでなく、東日本に広く拡散しました。私たちは、汚染された土の上で、この先何十年も暮らさねばならない子ども達に、本当に済まないと思っています。セシウム137は、30年待ってやっと半分です。もっと毒性が高く半減期の長い核種も、どんな悪影響があるのか、計り知れません。

 しかし、汚染はほぼそのままなのに、被害はどんどん見えなくされていきました。私たちの安全を担保していた、さまざまな基準値は緩められ、今、私たちは以前とは全く異なる被曝環境での生活を余儀なくされています。食品の放射能測定の手法も簡略化され、検出限界値は2桁から3桁も高く緩められました。事故前と同じ測定手法を行えば、明らかに事故前とは汚染状況が異なる農産物、水産物が、平然と『不検出』と表示されるようになってしまったことも、今回の事故が為した罪です。

 健康被害に関しても同様です。作業員なら労災が適用されるレベルの被曝を、多くの住民たちがさせられていますが、その健康管理はほとんどなされていません。
 それどころか、既に明らかにされている低線量被曝の人への影響までもが、著しく軽視されるようになりました。また、遺伝的影響についても、同じ哺乳類であるネズミでは既に明らかな害が判っているにもかかわらず、人で同じ実験が出来ないのを良いことに、あたかも害が無いかのように広報されています。このような状態で、私たちはいったい何を信じて、自分や家族の健康を守ればよいのでしょうか?

 将来も心配です。たとえ今から全ての原発を廃炉にしたとしても、その作業は私たちが生きているうちには完了できません。原発事故後に生まれ、何のベネフィットも得ていない子ども達に、自分の死後の被曝や汚染を、全て押し付けていくことに、皆さんは何のためらいも無いのですか?
 皆さんや政府が進めようとしている原発再稼働や再処理、汚染水の海洋放出は、次世代や、さらにその先の世代を苦しめ、ただただリスクを押し付けることになるのです。

 しばしば『トリチウム水』と呼ばれる汚染水、すなわち『一度ALPSを通したトリチウム及び複数の放射性物質による汚染水』に関しては、もう一度ALPSを通せば海に流せるとか、むしろ希釈すればそれだけでよい、という酷い話も出ていますが、とんでもないことだと思います。確かに現在の法基準では、濃度の規制が重要なので、もしかしたら乱暴な話、あぶくま高原からの湧水をフルに使って、希釈しまくれば、海洋放出をしても『犯罪』にはならないのかもしれません。
しかし、果てしなく見える広い海も、有限の資源ですし、海は私たちだけのものではありません。
皆様はこの7年、世界一海を汚してきた電力会社ではありますが、どうか最後のプライドを持って、これ以上、海に、そして世界に負担を強いるのはやめてください。

 避難を続けている私たちも、福島に残り、また戻ってがんばっている仲間達も、この7年、心から笑えた日はありませんでした。避難を強いられ故郷を見られないまま亡くなった方々、避難住宅を追い出されたために心身を病み、未だ入院中の方、差別を受け、いじめられ、家から出るのが怖くなってしまった人。そんなおひとりおひとりの、元気だった頃のお顔を思い出しては、胸が締め付けられる思いです。

 原発さえなければ
それが、私たちの共通の痛み。そして、未来への悲願です。
原発が生むのは電気とお金。しかし、原発が奪ったのは、命と、生活と、生業と、夢と、人生と、かけがえのない大自然。
 天秤にかけるべくもないのではありませんか?
どうか、目を覚ましてください。電気の作り方は沢山あります。お金のために、どうかこれ以上、人々を虐げないでください。被害者の声を聞き流さないでください。今の私の声が、再び子孫の声とならぬように、そのための何より確実な手段は脱原発です。
 私達、原発事故被害者の奪われた人生は、もう元通りにはできません。ならばせめて、子どもや孫たちには、同じ苦しみを与えないでください。
 また、この先も、汚染の中で生きなくてはならない無数の命に対して、心からの謝罪と反省をお願いいたします。
 そして、どうか共に、脱原発への道をあゆんでください。(K)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.278(2018年11月11日発行)より

ブログ担当者より以下の動画を紹介します。
今年2月に行われた「責任取ってよ!第7回広域避難者集会2018」の模様です。
原発事故で関西へ避難されている方を招き、東京に避難している方との対談がメイン企画でした。


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Posted by脱原発・東電株主運動事務局

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