FC2ブログ
Welcome to my blog

大飯原発訴訟で大阪地裁「看過し難い過誤、欠落がある」

脱原発・東電株主運動事務局

大飯原発行政訴訟で市民側が勝訴
 2020年12月4日、大阪地裁の森鍵一(もりかぎはじめ)裁判長は、商業用原発の行政訴訟(国などの行政機関が行った行為の違法性等を問う裁判)としては初めて、原発の設置許可を取り消す判決を下した。
 当日の判決公判、法廷で裁判長が「大飯発電所3号機及び4号機に係る発電用原子炉の設置変更許可を取り消す」と言い渡すと、傍聴席はどよめき、拍手がわき起こった。(毎日新聞より)
20201204大阪地裁判決
※2020/12/4判決直後の様子。画像クリックで動画閲覧ページへ移動します。

 裁判は、2012年に127人の市民により起こされた。
 起訴状及び原告側準備書面では、許可取り消しを求める訴因について基準地震動以外にも提起されていたが、判決では「基準地震動を求める手法について瑕疵があり、その結果運転許可を取り消す」と判断され、その他の基準津波の評価の誤りや制御棒挿入遅れなどについては残念ながら却下されている。
 判決を一言で表せば「地震は過去の平均値では起こらない」。この当然のことが裁判により認められた。

過去の地震評価は全て失格だった
 今まで、原子力施設の基準地震動は何処も何度も引き上げられてきた。それだけ最初の設定が大きく間違っていた。これは国(規制側)も事業者も認めざるを得なかった。
 福島第一原発事故までに3原発で3度も基準地震動を超える地震に遭遇し(*)、ついに2011年3月11日を迎えてしまった。
 3.11でも2原発で基準地震動を超える揺れを観測している。言い換えるならば、原発近傍で発生したマグニチュード6.5を超える地震では、全てで想定を大きく超えたのである。

原発耐震性グラフ
*住宅メーカーと原子力発電所の地震基準比較

 2011年以前に、当時の原子力安全・保安院は「残余のリスク」として、基準地震動を超える地震による施設、設備の損傷への対策を指示していたが、法令による強制ではなく、事業者の自主的取り組みに据え置かれていた。そのため、事業者の取り組みも対策手法もおざなりで、その結果についての審査も行われていなかった。
 設置許可を揺るがす行政手続きになっていなければ、巨額の費用をかけて安全対策をする理由を事業者側は見いだせない。言い換えるならば株主――この場合は私たち株主運動のように、原発の危険性に警鐘を鳴らす立場ではなく、巨額の支出により経営状態が悪化する可能性があると懸念する機関投資家などの一部のことだが――も納得しないなどと事業者は抵抗していた。
 結果、耐震補強などの一定の対策はしたものの、巨額の費用が発生しない範囲で基準地震動を設定し、津波対策もほとんどしなかった
 現在、原子力施設では巨大な防潮堤を作り始めたところが多数あるが、津波評価が今までどれだけ杜撰だったかの証明に過ぎない。
 今回の判決で地震評価に重大な誤りがあることが認定されたことで、自動的に津波評価についても重大な欠陥があると見なければならず、例えば柏崎刈羽原発や東海第二原発の津波評価が覆る可能性が高くなる。
 作った防潮堤がものの役に立たないのでは、巨額の投資は無意味になる。判決の衝撃力の大きさが分かる。
(*)2005年8月16日の宮城県沖M7.2の地震で女川原発、2007年3月25日の石川県輪島市沖M6.9の地震で志賀原発、2007年7月16日の新潟県中越沖M6.8の地震で柏崎刈羽原発。

東日本大震災で破壊された原発の電源設備
 東日本大震災までに有効な津波対策をした原発は一つもない。偶然、東海第二だけで、浸水深想定を引き上げたため追加設置した海水ポンプの防護壁が3.11に間に合い、5.4mの津波に襲われたが、辛うじて3台中2台の非常用ディーゼル発電機冷却用ポンプが海水をかぶることなく動き続けることができ、最悪の「メルトダウン」を回避できた。
 しかし外部電源設備4系統については地震で全部遮断され、受電ができなかったことは、耐震性能が不十分だったことを示している。
 東日本太平洋沖地震による福島原発震災は、津波で破壊されたと国や東電は言うが、その前に地震でも重要設備の多くが破壊されている。特に送電鉄塔をはじめ電源設備の多くは地震で破損し、外部からの電力を受け取れない状態になっていた。
 女川原発でも震災時には外部電源5系統のうち1系統のみが受電可能だったことに加え、到達した津波が13mで、想定の13.8mに辛うじて達しなかったことから主要な冷却システムは稼働できたため、冷却を継続できた。
 しかし地震により1号機タービン建屋で「高エネルギーアーク損傷火災」(*)が発生しており、電源設備の耐震性は他原発と同様、極めて脆弱だった。
 中越沖地震の際に柏崎刈羽原発3号機で起きた起動変圧器火災と同種のものであり、過去の経験に基づき水平展開をしていれば防止できた可能性があるが、女川も他原発と同様に基準地震動を低く設定していたため、この種の損傷を考慮せず、耐震性能に重大な欠陥があるまま運転し続けた。
 高エネルギーアーク損傷火災対策の重要な点は、発火しても延焼しないよう不燃性ケーブルを使うことだが、老朽原発の高浜1、2、美浜3、東海第二は不燃性ケーブルに交換していないことからも解決はされていない。
(*)高エネルギーアーク損傷火災 アーク溶接は、溶接端子と母材の間に放電(アーク放電)する時に発生する5千度から2万度の高温状態を利用して、鋼鉄などの金属を溶かして繋ぐ溶接方法。設備の故障や振動などで発生する端子やケーブルの短絡などにより発生した「アーク放電」により、温度や圧力が急激に上昇してケーブルや電気設備を破壊し、火災が起こることがある。

東海第二の耐震性評価をやり直せ
 東海第二については、保安院時代に行われた「耐震バックチェック」でさえ「耐震性能がギリギリ」であることが分かっている。
 クリフエッジと呼ばれる破壊限界点は「1038ガル」と評価されたのに対し、基準地震動は「1009ガル」と97%を超えている。つまり「余裕」はわずか3%弱。
 「ばらつき」「不確かさ」を考慮すれば、明らかに失格であるにもかかわらず、規制庁は、数次にわたる院内集会や規制庁への行政不服審査口頭意見陳述に対する回答などで「基準地震動を超える地震は想定していない、する必要もない」「基準地震動を超えたとしても直ちに重大な損傷を引き起こす破壊は生じない。なぜなら余裕があるから」と、市民や議員に対して回答してきた。
 「規制側である」との公的立場も、規制値を定めた客観的立場も見いだせない。「基準を超えてもすぐには壊れない」は、規制側の言うべきことではない。「速度を超過しても直ちに事故につながるわけではない」と警察が言うわけがないことでも分かるだろう。
 規制庁は「規制基準適合性審査を通過させること」を目的として、事業者の立場で審査していることが露骨に見いだされるのである。
 今回の判決では直ちに原発は止まらない。国(規制委)は控訴することを検討している。控訴されれば許可取り消しの効力は停止する。
 しかし、行政訴訟において国の審査が違法、無効とされたことは極めて重要である。それは、規制委による調査・審議の手法そのものを違法としたからだ。
 これで、他の原発において行われた耐震性評価も、全部失格だという主張もできる。
 規制委は大飯原発はもとより、全ての原発の耐震設計審査をやり直すまで、規制基準適合性審査の審査書(設置許可)を取り消すべきだ。
 なお、判決の骨子は以下の通り。
 関西電力は、大飯原発3号機及び4号機の設置変更許可申請において、各原子炉の耐震性判断に必要な地震を想定する際、地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算した平均値としての地震規模をそのまま用いた。新規制基準は、経験式による想定を超える規模の地震が発生し得ることを考慮しなければならないとしていたから、新規制基準に基づき基準となる地震動を想定する際には、少なくとも経験式による想定を上乗せする要否を検討する必要があった。原子力規制委員会は、そのような要否自体を検討することなく、上記申請を許可した。原子力規制委員会の調査審議及び判断は、審査すべき点を審査していないので違法である。

20201204報告集会PNG
※2020/12/4判決直後の報告集会。画像クリックで動画閲覧ページへ移動します。
(山崎久隆)
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.296(2020年12月13日発行)より
関連記事
スポンサーサイト



Posted by脱原発・東電株主運動事務局

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply