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東京電力の破壊的体質はいつまでも続く

脱原発・東電株主運動事務局

 柏崎刈羽原発で、中央制御室への不正入域事件が発生した。
 読売新聞のスクープから各社が追いかけ、最後に原子力規制委員会(規制委)が追いつく展開で問題が明らかになったが、同時に規制委の欠陥も露呈した。
 昨年10月に原子力規制庁(規制庁)のサーバーがクラッキングされ情報流出が疑われた事件といい、この国は大きな組織ほど「セキュリティ」に重大な欠陥がある。繰り返し露呈する脆弱性は何処に原因があるのだろうか。震災後10年を経ても、安全対策はまともに機能していない。
キングボンビー
※東京電力に取りついた貧乏神=柏崎刈羽原発?画像は、ゲーム桃太郎電鉄公式から。

事件の経緯
 東電の2月9日付報告書『「柏崎刈羽原子力発電所所員による発電所建屋内への不正入域」事案概要』から時系列を抽出する。(丸付き数字は筆者)
 ①中央制御室員Aは、20年9月20日朝、出勤して自分のロッカーからIDカードを持って職場の中央制御室に向かおうとしたところ、カードが見つからなかった。
 ②その日、休みだった同僚の中央制御室員Bのロッカーの鍵が開いていたので、その中からBのIDカードを盗み出し、これを持って制御室に向かった。
 ③警備を担当している防護管理グループや中央制御室長には、無断持ち出しをしたので当然ながらIDカードの紛失を報告しなかった。
 ④このため防護管理グループによるAのIDカードの無効化は行われなかった。
 ⑤Aは周辺防護区域の出入口にいる委託警備員に対してBの氏名を名乗ったため、委託警備員は違和感を覚えて複数回IDカードとAを見比べたが、入域を止めるには至らなかった。
 ⑥防護区域の出入口で個人を特定する認証が複数回エラーとなったことを社員警備員Cが確認。監視モニター越しに登録されている顔写真と見比べ、Bと似ていないことに疑念を抱いたが、それ以上の確認はせず、Aに対し周辺防護区域外に戻り、個人を特定するための識別情報を登録し直すように伝えた。
 そして報告書では、次の記述がある。⑦『個人を特定する認証でエラー発生時における登録方法を定めた社内規定がなかったため、社員Cの裁量により社員Aを社員Bであると判断した上で、委託警備員に対して登録を指示し、社員BのIDカードに社員Aの識別情報が登録された。』現場の独断でID情報が書き換えられたのである。
 ⑧Aは、自分の識別情報を登録し直したBのカードを使用し、再度周辺防護区域通過を試みた。委託警備員も違和感を覚えて声を掛けたが、Bの名前を名乗ったことから入域を許した。
 結論として報告書には次の記載がある。⑨『IDカードの管理不徹底、社内規定の不備など一連の不正により、社員Aが、周辺防護区域及び防護区域を通過し、中央制御室まで入域することを許した。』
 発覚の経緯もとんでもないものだった。⑩Aは勤務が終了した20日の夜にBのカードをロッカーにそのまま戻した。翌日朝B本人が勤務で入域しようとしたところ、防護区域入口で個人特定認証が複数回エラーとなった。その時間帯にCが継続して勤務していたことで、昨日の登録の経緯から不審に思いBから事情を確認したところ、AのIDカードの不正使用が発覚した。
 ⑪21日中に防護管理グループが規制庁核セキュリティ部門に報告するとともに、Aの入域許可を停止した。
 ⑫東電の時系列には書かれていない事実として、柏崎刈羽原発の保安規定の審査が終了し、事件発覚2日後の23日に、規制委は保安規定変更申請を許可した。
 ⑬更田委員長など規制委に事件が報告されたのは、約4ヶ月後の1月19日だった。
生体認証
※ブログ担当者はメインバンクで生体認証利用して10年以上経ちますが、
 生体認証情報を一度も更新していません。滅多に更新などしない代物の筈。

東電の理解不可能な行動
 一人一人を責める意図は全くない。これらは全て東電と、規制庁という規制機関の体質の問題であり、「原子力ムラ」の「同族意識」下で、なあなあにされてきたツケと、本質的には極めて破壊的な装置、原発とのアンマッチに起因する事件だからだ。
 これに類するものを世界中で探すと、それは核ミサイル搭載潜水艦や弾道弾ミサイルサイトに勤務する軍の兵士、あるいは戦略防空司令部などに勤務する監視員などのそれと似ているかもしれない。
 一瞬の間違いで世界を滅亡させるパワーを管理しているうえ、これらの人員は、常に物理的、精神的圧迫、さらに攻撃の対象ともなっている。そのストレスは私たちの常識外の強さだ。その観点からも核廃絶は必要なのだ。
 翻って、日本の原発労働者の実態はどうだろうか。
 あまり私たちと変わることはない。抜き打ちで行われる検査や調査、訓練において、どのくらい緊張感があるのか。例えば米軍の場合は、年に何度も行われる「適性チェック」において成績不良ならば軍を除隊になることとは比べものにならない。
 東電は否定しているが、IDカードの貸し借りなど日常だったのだろうか。原発の現場というのは一つ間違うと「核攻撃に匹敵する大災害」になりかねないという緊張感が、現場にはあまり感じられないのである。
 今回は、東電が震災後に始めて再稼働を計画する柏崎刈羽原発で起きた。審査はまだ続いており、問題が起きるたびに審査会合で質され、社長も呼び出されてきた。それは現場にとって何だったのだろうか。
 原発を動かしたくないというのならば納得だが。規制庁の原子力保安検査官も常駐している現場で何故起きるのか、構造面も含めて解明しなければならない。

行動と対応の疑問点は山のよう
 東電の報告書から読み取れる具体的行動や対応は疑問点だらけだ。具体的に考察する。
 時系列①から③は、あまりにも安易だ。一般的に高度なセキュリティを要求される部門、コンピュータルームなどへの入域では、ログファイルに全て記録されるので、今どき聞いたことがない。報道では東電が会見で「遅刻したくなかった」といった動機を語っているが、それら動機とのバランスも悪すぎる。これではもっと重い動機、例えば金銭目的や脅迫などだと、さらに容易に実行しかねない。東電の労務管理はどうなっているのか。
 また、②ではカードの管理上の問題もある。施錠されていない個人ロッカーに何故入れるのか。管理部門の施錠保管場所に入れる必要がある。基本が出来ていない。
 ④は、なりすまそうというのだから当然だ。しかしこの段階で、容易に中央制御室に入れると誤認しているように感じられる。別人IDで簡単に入れると社員が誤認するセキュリティシステムとは何か。
 それとも、東電は会見や議会答弁などで「核物質防護の観点から詳細は明らかに出来ない」と説明を拒否しているが、社員に対してもシステムの詳細を明かしていないのだろうか。
 高度なセキュリティレベルの維持には、その範疇にいる対象者は、その意味だけでなく仕組みも熟知していなければ、本来の高度性は発揮できない。安易に入域可能と社員が誤認する教育をしているのであれば、会社の責任は重い。
 ⑤は委託警備を容易く突破した経緯だが、これでは警備の意味を成さない。「顔パス」である。正当な入域権限を有しているかどうかチェックできない警備では存在する意味がない。この警備はゲートを通過させることが目的で仕事をしている。
 ⑥は異様だ。社員のセキュリティ教育はどうなっているのだろうか。IDと顔が合わないからIDの情報を書き換えるよう指示を出したのだ。そんな指示が現場で出せて、その指示で書き換え可能というのでは、誰でも入れたことになる。このような書き換えが出来ないようにシステム管理をしていなければ、セキュリティチェックにはならない。構造的欠陥である。
 ⑦でセキュリティシステムが何の意味もなくなった。本来無効のIDカードの内容を、目の前にいるなりすました職員の情報に「社員Cの裁量で」書き換えさせた。これではいかなる認証方式を採っていても無意味だ。
 どうしてこうした行為に及んだのか、当該職員以上にセキュリティ担当者の社員Cに尋ねなければならない。これは規定のあるなしの問題ではない。書き換える規定はあるべきではないし、ないならばしてはならない。
 ⑧書き換えたので再度エラーは出なかったが、「あなたは誰」と警備員が尋ねている。最後の関門だったのだが、カード記載の氏名を名乗ったので通したという。カードと本人が異なっていることを認識して通過させている。お手上げだ。
 ⑨では結論めいたことを書いているが、『カードの管理不徹底、社内規定の不備でAが中央制御室まで入域することを許した。』としているだけ。だが、こんな表面的な話ではない。意図的な突破が容易に出来ることを実証して見せた。この通りのことをドラマでやったら、見ている方が余りにもずさんな警備体制に、「現実にそんなことあるわけない」としらけてしまうレベルだ。いとも容易く正面から侵入できる。これを建て直すのは容易じゃない。
 ⑩では発覚の経緯が記載されているが、退域時はどうだったのだろうか。ノーチェックだったのか。また、意図的侵入ならば翌日発覚しても目的は果たしているだろうから、これもまたセキュリティ上の欠陥だ。朝起きたことが翌日まで誰にも何処にもチェックされなかった。一般的にアラーム付きのセキュリティシステムならば、現場だけでなく指揮系統の中枢(例えば本店原子力本部)にも警告があるべきである。

規制庁は何をした(何もしない)
 この事件の翌日、21日には規制庁に報告が上がっていた。内容は衝撃的なもので、あらゆるセキュリティシステムが無効になってしまうずさんさに心底驚愕し、同時に恐怖を覚える、本来ならばそうなるべきことだ。
 ところが規制庁では、規制委員長以下5人の委員には伝えず、4ヶ月も時間を空費した。その間に規制委は原発の運営に関わる保安規定の審査を行い、それを決定した。それが東電の時系列表に書かれていない⑫だ。
 ⑬では、読売新聞の取材で委員長に事件の概要が伝わったことで、ようやく報告が上がったという。規制庁の並外れた意識の低さにも驚くしかない。
 おそらく「検査合格前は委員会には知らせない」意識が働いたのだろう。
 更田委員長は取材に対して『人のIDを借りたというのは、ちょっと聞いたことがない。原子力施設で働く人のセキュリティに関する教育といいますか、意識の問題ですね。だから、東京電力の核セキュリティ教育が、果たしてどうだったんだという話には当然なるだろうと思いますし。一つの事例が、制度全体、システム全体の信頼に対して大きな疑問を投げかけてしまう結果になるわけですから、規制委員会としてもこれは重く受け止めたいと思いますし、また、東京電力に対しても、そして、そこから得られる教訓については、全事業者に対して厳しい対処が迫られると思います』と語った。
 しかし、人ごとのように東電を批判できる立場ではない。規制庁のガバナンスもまた、崩壊している。委員長の知らないところで事件が報告され、事件は終息しようとしていた。規制庁は委員会に対して、定例会でまとめて報告する事項に含めていたという。
 規制庁のシステムクラッキングといい、この組織もまた、深刻な機能不全に陥っていることを自覚してもいない姿勢には心底驚くほかない。
 規制委は保安規定に合格させている。事件後も合否判定には「そんなの関係ない!」という。不正入域は核物質防護上の問題、これは原子力委員会が所管する。一方保安規定は原発運転上の規則を定めており、入域などの人的な問題は範疇外。そういう理解なのだろう。言うまでもなく度外れて無責任だ。このような理解では、審査するほうの「適格性がない」ということだ。

「チャイナシンドローム」再び?
 この事件を聞いて最初に思い出したのは、遠い昔、私自身が中央制御室に入った時のことだった。
 2001年の米同時多発テロ事件以前は、一般人も運転中の原発の中央制御室を見学できた。認証ゲートなどを通って中に入ったのだが、浜岡では本来は日の差さない原子炉建屋内部に太陽光線が入っていて観葉植物が置いてあり、案内してくれた職員が、「ずっと日に当たらないと体にも悪いので、外部から太陽光を、光ケーブルを使って取り入れている」といった説明を覚えている。
 中央制御室も見学区域は仕切られていたが、その気になれば運転中の制御盤にも行くことが可能だった。また、運転中の原子炉圧力容器の真上、オペレーションフロアにも入ることが出来た。稼働中の原子炉が真下にあり、かなり気持ち悪かったが。
 9.11以後は「テロ対策」として、それらの場所には一切立ち入れなくなった。そのころからセキュリティも厳しくなったはずなのだが。
※映画「チャイナシンドローム」販売ページにリンクしています↓。
チャイナシンドロームamazon
 もう一つ思い出したのは1979年のアメリカ映画『チャイナシンドローム』。
 ジャック・レモン扮する「ジャック・ゴデル」は原子力技術者で、運転間もない原発の欠陥を、ジェーン・フォンダ扮するジャーナリスト「キンバリー・ウエルス」が持ち込んだ中央制御室の映像から知る。なんとか原発を止めようとするが、事故を引き起こす寸前にあることを知り、警備員の拳銃を奪って中央制御室に立てこもる。原発の運転を止めるよう要求するが警官隊に射殺される。その直後、原発は振動を発生させ、異常を来す。
 映画公開直後にスリーマイル島原発事故が実際に発生し、炉心溶融(チャイナシンドロームとは、炉心溶融したデブリが地殻を突き破り、米国の反対側の中国に達するという趣旨の造語)を起こしたことから、予言的映画として世界的に有名になった。
 中央制御室不正入域問題、やはりこの事件も、何かの予兆なのかもしれない。折しも2月13日夜、東日本太平洋沖地震の余震と見られる福島県沖の地震で、福島第一原発と女川原発で地震に伴う異常が確認されている。
*脱原発・東電株主運動ニュースNo.298(2021年2月21日発行)より
(山崎久隆)
*ブログ担当者から
2021/2/13の地震で福島第一原発内の地震計が昨年7月から故障していたのを把握しながら
放置していたことが明らかになっています。
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Posted by脱原発・東電株主運動事務局

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